横浜「瀬上の森」開発のアセスにおける市民参加
                                 2006 3.31  島津康男
  
1 事業の特性と方法書の内容 
 横浜市の南端、鎌倉市との境界に近い「瀬上の森」で33.5haを住宅団地にする計画があり、そのアセス方法書が2月24日に告示された。この事業については平成元年に一度アセスが行われたが、事業凍結によって流れており、今回は保全緑地を従前の17%から50%に増やし、この緑地を事業者(東急建設)が横浜市に寄付する形を取るとともに、高層建築物を減らし、計画人口を3500人から2050人へと大幅に減らすなどして、環境への配慮を強化するとしている。ただし、計画地の真ん中を通る幹線道路の両側の商業施設は以前の計画になかったものである。計画の規模が小さくなる場合は、計画変更があってもアセスの再施行をしないのが普通だが、今回は補正アセスでなく新しいアセスとして実施しているのは、むしろ珍しい。
 方法書の正式名称は
        (仮称)上郷開発事業環境影響評価方法書
                 平成18年2月  東急建設株式会社  144ページ
であり、
     事業計画     21%
     地域の概況    50%
     影響評価の計画  29%
となっていて、全体のページ数は妥当であるが、環境影響項目の選定、調査・予測の手法の選定についての章が全体の30%以下であることは、方法書本来の意義から見て妥当とはいえず、記載内容も技術指針の丸写しでメリハリに欠ける。


2 地域の特性と市民活動
 この地域は横浜最大のホタル自生地であり、又、隣接する市民の森とつながって鳥の移動コリドーともなっているので、環境保全への関心は高い。現地を訪れたところでは、いわゆる「谷戸」の典型であり、規模はより小さいものの、愛知万博で問題になった「海上の森」と似た印象を持った。そして、「瀬上の森パートナーシップ(SMP)」という市民団体がこれまで保全活動を行ってきたが、今回のアセスにも積極的に取り組み、4月10日の意見書提出期限に向けて方法書、特に意見書の出し方に対する勉強会を3度にわたって実施している。


3 SMPの勉強会
 そこでは、「ホタルをシンボルとする谷戸の景観と生態系を保全する」ことを目標に、方法書を読みぬき、「みんなの心配事」の情報を共有化した上で、各自が自分の心配をもとに意見書を作成することにしている。グループとしての意見書でなく、心配事を共有した上で、めいめいが独自の意見書を作るやり方はユニークであり、それだけに作業も大変である。
 女性を中心とする会員が土地勘に詳しく、地域環境のベテランであることはもちろんだが、その上で3問3段構造による「住民参加投票ゲーム」で心配の情報共有をはかっている。例えば、総計を1000点として、最上段は

  計画の内容に問題があるのでは 371  
   (その中の第二段で多いのは「都市計画としての疑問」 199)
  今の計画で環境を保全できるか 446  
   (その中の第二段で多いのは「生態系のにぎわい」   235)
  アセスの方法・内容は適切か  183

となっており、市民グループの性格から「環境保全」への関心が高い他、アセスそのものへの関心が少ないのは他での事例と共通である。
 ここでユニークなのは、意見書の書き方を指導していることである。つまり、グループとしての意見を集約しようとせず、各自で「自分が心配すること」を

(起) 方法書に書かれていないこと、あるいは書いてあっても疑問に思うこと、わかりにくいこと
(承) 開発に伴う環境への影響で心配していること
(転)安心するために必要なこと
(結) 〜について、十分な調査・予測・評価をして、具体的な措置を講じること

の形でまとめるよう指導していることである。
その例として
 ・方法書には、生き物の調査範囲が周辺50mまでと書いてあります。
 ・ホタルは毎年いたち川支流の下流まで沢山でていますが、そのホタルに工事や水路の付け替えの影響はないのでしょうか。
 ・いたち川全域のホタルの生息環境が守られるべきだと思います。
 ・そこで、周辺50mに限らず、流域全体の十分な調査・予測・評価をして具体的な環境保全の措置を講じてください。 私たちは、ずっとホタルの調査をしてきました。その資料を提供しますから、準備書の作成にあたって利用してください 共同調査の提案もいたします。

のように、批判だけでなく、調査への参加を提案しているのはユニークである。なお、ホタルに関しては、HEPによるMITIGATIONの評価を行うによい事例ではなかろうか。


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