アセス情報
             清渓川のその後
                                                  島津康男

 今でも人気の清渓川 ソウルの清渓川復元事業は、工事中に環境技術学会からも視察団が訪れたが、昨年10月1日の完成後も新しい観光ルートとして日本からの見学者も多い。又、これに関するシンポジウムやセミナーも日本でいくつも開かれており、例えば7月24日に大阪で地球関西フォーラムが開かれ、9月1日には環境アセスメント学会の日韓シンポジウムが開かれる。東京の日本橋の高架道路を清渓川にならって撤去しようとの声もある。
  
  豪雨時の清渓川 このように、大きな話題であり続けている清渓川だが、私も7月25日に何回目かの訪問をした。それは驚く光景だった。たまたま、前日から日雨量200mmの大雨だったが、普通30cm位の水位なのが、1m以上になって、川岸の散策道路も草むらも水没し、ごうごうと音をたてて濁水の奔流、5mの高さのある三面張りの壁から噴出している水もあり、アクセスの階段はすべて閉鎖されて警備員がたっている有様だった。次の日には、水位が半分になって草むらは見えているが、すっかり泥まみれ、放してあった魚なども流れ去って、ただの濁り川になっていた。
  
  この川は自然の川でなく、流域下水を下流の処理場で処理し、上流にポンプアップして流している全くの人工川である。そのための経費だけで1年18億ウォン(2.1億円)になる。そして、大雨が降れば、下水道に入りきれず、直接川に流れこんで濁水となるわけである。事業者であるソウル市は、あくまでこの事業を都市再開発としてとらえているが、その面から見ると、随分荒っぽい再開発の感じがする。環境省の人にそのことをいったら、「よくも悪くも、こうと決めたら突っ走るのがウリナラ(わが国)のいい所でもあり、悪い所でもあるんで、理解してください」といわれた。
  
  アセスの事後調査 なお、高架道路の撤去による大気汚染の減少効果や局地気象特にヒートアイランドの緩和効果については、日韓共同の調査(大気汚染について日本側は武蔵工大の青山貞一氏、ヒートアイランドについては国立環境研究所の一ノ瀬俊明氏)などが進行しているが、韓国側のデータ収集が鈍いようである。これらは環境影響評価書で記載しているアセス項目であるが、事業者の頭が都市再開発にあるため、事後のモニタリングが不十分なのだろうか。それでも、高架道路の撤去によって汚染濃度は半分またはそれ以下になっているようである。もちろん高架道路の交通量がなくなったことが最大の原因である。局地気象については、広域風が東風(下流から上流へ)の時には、橋のところで直角方向の南北に流れ出す風が認められ、風道としての機能はあるようである。

  市民葛藤の記録 なお、「清渓川復元 − ソウル市民葛藤の物語」2006年1月 NANAM(韓国版)、日刊建設工業新聞社(日本語版)がある。この事業に対する市民参加の記録であるが、「参加」でなく「葛藤」となっているのが面白い。李明博ソウル市長が、市長選挙の時の公約に「清渓川復元」を掲げ、その実現に邁進した記録であり、市民が協力から離反に変わっていった経過でもある。最初から反対した沿道の露天商は完成式にも招待されなかったし、市長にとっては来年の大統領選挙を念頭においての事業だった。彼の属するハンナラ党では、かつて清渓川高架道路を作った朴大統領の娘さんがライバルである。

  しかも李市長はこの道路建設を請け負った現代の出身である。