韓国の始華干拓の現在
                                 2007 09.10 島津康男

 韓国の仁川の南隣にある安山市で、長さ12.6kmの潮受堤により17,300ha(その中で淡水湖は6,100ha)を干拓する始華干拓については、1999 05.23のアセス情報で報告したことがある。 
 
1987年に着工し1994年に締め切りを完了したところ、淡水湖のBODが3mg/lからあれよあれよという間に24mg/lにまで上昇し、1998年にはゲートを開いて利水、養魚を断念することになった。諌早湾の干拓(3,550ha)はこの失敗に学べと、日本でも有名になった事業である。着工時に4万だった安山市の人口が完成時に55万になって、化学工場及び家庭からの排水が淡水湖に入ったためである。化学工場からの排水はパイプで沖に排出したが、現在では更に人口が70万に増えている。
 
 この9月初めに叉訪れたが、新しい事業が二つ行われている。
 一つは、9mの干満差を利用しての潮力発電で、25万kwhの能力を持つ。これは世界一のフランスのランスでの24万kwhをしのぐと誇っているが、完成は2009年としている。これまでのゲートに加えて発電用のゲートを作り、そこにタービンを置くが、一方向の回転なので、満潮時にしか稼働しない。従って、発電量そのものよりも自然エネルギーの利用及び実質的にゲートの数が増えることによる内湖の浄化に役立つことを強調している。

 もう一つの新事業は湿地公園の造成である。
 これは内湖の奥、つまりもともとの海岸にある流入河川の川口に100haのビオトープを作るもので、2005年に完成した。潮受け堤によって内湖の水位の変動は少ないが、さらに内湖の直接影響を受けないよう堤で隔離し、さらに川に沿って階段状になっている。既に、150種、15万羽の鳥の楽園になり、生態学研究所もある。同時に、流入河川の水質改善に役立つことを強調している。
 
 この30年、韓国は黄海側の海岸で次々と干拓を続け、農地を作ってきた。その手法を都市部にまで適用したのが誤りのもとであるが、発電、ビオトープの両事業とも、水資源公団が行なっている。その理由は始華湖の事業そのものに干拓だけでなく利水の目的があったからだが、干拓の方も止めたわけではなく、グリーン・シティ計画の名で残っている。諌早がこれらに学ぶところはないだろうか。始華が直接に黄海に面しているのに対し、諌早湾は有明海の一部であり、その有明海は天草列島で外海と隔てられた閉鎖水域なので、始華より条件が悪い。
 
 なお、始華より数10km南の平澤の干拓地は、農業用地が不要になって、現在ソウルにある米軍基地の移転先になる。さらに、始華から南に200kmのセマングム(新万金)には33kmの巨大な潮受堤が今年になって完成したが、干拓地をどう使うかは決まっていない。ここは奈良時代に百済を助けに行った日本水軍が負けた白村江(現在の名前は錦江)のそばである。