普天間飛行場代替施設の方法書が確定した(2008.3.17)
                          島津康男

方法書の確定 
 3月14日に、沖縄防衛局は「普天間飛行場代替施設に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料(修正版)」395ページを公表し、方法書の手続きが完了して、正式のアセス調査に入ることができるようになった。長たらしいタイトルになっているのは、異常な経過を辿っているからで、その状況はこれまで「アセス情報」で報告した通りだが、19年8月に方法書が出、計画が確定してないとして知事が一旦受取を留保した。10月24日に留保を解除、審査会の審査を経て12月21日に知事意見を出したが、1月11日に「埋立事業説明書」が出て、再び審査が行われ、1月21日に二回目の知事意見となった。そして、2月5日に今度は「追加・修正資料」が出て、3月4日の県文化環境部長の意見となり、最終の「追加・修正資料(修正版)」となったものである。形式的には、県の意見を踏まえて方法書を確定したことになっている。
独善的なアセス
 更に遡ると、16年に辺野古沖合案の方法書が出たが、計画が確定しないため手続きが消滅、3年経った19年8月に今回の沿岸V字型滑走路案への方法書が出たのだから、合計すると5回も方法書関連の文書が出たことになり、これだけでも異常である。そうなった基本には、日米協議という政府間の問題と国内での県・政府間の調整が絡むこと、その一方で手続きだけは進めようとの事業者の独善がある。
 「土砂をどこからどのくらい持ってくるのかなど建設計画が未確定、どんな飛行機がどんなスケジュールでどのように飛ぶのかがわかっていない」といった審査会からの質問に「未確定」として答えず、やむをえず「計画内容が確定した段階で改めて公表を」といった先送り容認の12月21日の知事意見になったのに、それから20日後に「埋立計画」を出し、これを踏まえての2回目の知事意見からまたまた15日後に今度は「飛行計画」を出してくるといった、正に傍若無人の振る舞いで、県をそして県民を振り回している。11月30日の審査会からの質問は35項目76問にわたり、その中に建設計画も飛行パターンも入っているのにこれには答えず、その一方、20日間で作れる内容とはとても思えないものを知事意見の後20日で出してくるのは正に独善という他ない。
 しかも、驚くことに、2月5日の「追加・修正資料」には、19パターンの飛行ルートに対する予測騒音コンターが別添資料として載っているのである。「アセスの結果でなく参考資料」との言い訳をするにしても、調査・予測・評価の計画を記載すべき方法書に予測結果を示すとはどういう神経だろうか。しかもその資料は、方法書自体の提出より1年以上前の18年6月に作成されたものなのである。
県の評価 
 この事業のアセスでの一つの柱は「騒音」であり、もう一つは「ジュゴンを中心とする海域生物」である。後者に対して、事業者はビデオカメラ・ソナーによる事前調査を始めており、この作業自体が環境に影響を与えるとの声がある。前回の沖合案では事前にさんご礁でボーリングをはじめてひんしゅくを買ったが、今回はカメラやソナーの設置である。
 散々振り回されたにもかかわらず、県は
 ・ 建設計画に対して、複数案とのその比較評価を示している
 ・ ジュゴンの事前調査点を明示し、複数年にわたる調査可能性を示している
 ・ 航空機騒音について、実機調査・エンジンテストの調査・水中への影響検討を明記している

など、自分の要望を取り入れたことを評価しているが、実は、ジュゴンの調査期間は重要な意味をもっている。方法書の確定が3月にずれ込んだため冬季の調査が行えず、当初の予定であった今年8月の準備書提出が不可能になったからである。県は最低1年間の調査を求めており、しかも方法書確定前の調査期間は数に入れないとしているからである。
 事業者自身、複数案を示したこと、重点項目を設けメリハリを図ったことを自画自賛しているが、ジュゴンを含む生態系について最近広まってきた「生態系の定量評価技法」をどうして取り入れないのだろうか。
戦略アセスが必要 
 いずれにしても、その独善的態度からみて、個人的には本件は
日本最悪のアセスと思っている。さらに、沖合か、沿岸かと立地が変転していることからみても、本来は立地選定の段階をアセスの対象にする「戦略アセス」の対象なのではないか。さんご礁を埋め立てる沖合案をやめたのは、自然への影響もさることながら、船による漁民の抗議行動を避ける意味があり、沿岸案になると今度は騒音問題が表に出るといったトレードオフ関係が現れる。もし、戦略アセスを実施するとしたら、社会・経済環境も評価の対象となり、例えば「地元建設業の参入可能性」も評価の対象となる。沖合案はもちろん現在の政府案でも水深の大きい大浦湾を埋め立てることになり、県が微小な調整を望んでいるのも、集落と飛行ルートとの関係だけでなく、地元建設業界の参入の可能性も一つの理由である。
 沖縄では、現在那覇空港の拡張、那覇市モノレールの延伸計画に対し、立地選定に係る複数案を提示しての住民参加型計画を実施している。本件をその線で見直すことはできないのだろうか。同じように立地選定でもめた「愛知万博」のアセスでは、準備書の段階で複数案の選定経過と、相対評価の結果を記載している。本件でも、少なくもその位の配慮が必要であろう。
 日米共同アセスも この1月に米国カリフォルニア州裁判所は、「ジュゴンの保全」に関する判決を出し、90日以内にアセス文書を出すようにいっている。今回の方法書は、このことについて全く触れてないが、日米共同のアセスだって、さらに思いやり予算による米国アセス業者の参入だって考えられない方式ではなかろう。本件についてのアセス情報も、これで暫くのお休みになるが、行く末は簡単ではない。
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