アセス情報 091003  
            普天間飛行場代替施設のアセス準備書への審査会答申が出た
                              島津康男


 
答申は二本立て 10月2日に、表記の答申が知事に対して行われた。手続き上、施設建設の前提となる公有水面埋立ては別事業となっているため、答申も2つに分かれている(施設部分の答申は16ページ、埋立への答申は26ぺージ)。しかし、現実には一本として扱われており、内容にも重複が多い。施設については、28項目(各項目とも中項目さらに小項目に分類されているので、総計で400件)の指摘になっていて、すべてに渉って問題があることになる。例えば、「本準備書は、ぺージ数が5,400ページにも及ぶ膨大なものであることから、評価書の作成に当たっては、「調査結果の概要」に記載している調査結果そのものを別冊とするなどの工夫をさせることとある。なお、審査結果の全文は沖縄県のホームページに出ている。

 
事業そのものには触れず このアセスの準備書については、環境技術(2009 6月号)の報告でも私見を述べているが、その後8月19日には事業差し止めの提訴が行われるなど(アセス情報8月19日参照)、波乱万丈の経過を辿っている。しかし、答申はこれまでの他の事例と同じく、粛々として評価書の作成にあたっての修正を求めるスタンスとなっており、事業そのものに対する意見はない。なお、審査会では、計画やアセス内容の度々の変更がアセス手続きのやり直しにあたるのではないかも議論され、アセス法の専門家による意見陳述も行われて、制度上のグレイゾーンの存在が確認されたようだが、答申にはこれに関連する事項はない。
 私見であるが、審査意見の中で一番重視しているのは、前文の中にある「一旦実施されると現況の自然への回復が困難な不可逆性の高い埋立地に飛行場を設置する事業であり、環境影響が極めて大きいと考えられる。そのため、当該事業に係る環境影響評価は、より慎重にかつ十分に、より科学的かつ客観的に行わなければならない」の一文に凝縮されている。これを、事業そのものへの否定ととらえるのは読みすぎだろうか。

 
デモフライト 前述の報告で私は、中部国際空港のアセス事例にならい、実際の運用形態に近い形での公開デモフライトの実施を提案した。ところが、9月10日にはヘリ2機による公開デモフライトが行われるというハプニングがあった。あくまで住民への周知の一環でアセスの調査ではないと事業者はいっているが、公開ではないもののすでに2001年にもヘリ4機によるデモフライトを行っており、その結果は準備書の6章に参考資料として載っている。しかし、今でも連絡用のヘリは現地のキャンプシュワブに飛んでおり、実際の運用形態としてはさらに戦闘機のデモフライトが必要であろう。

 ジュゴン問題 今回の答申でもっとも重要な具体的指摘事項として「ジュゴン」があげられており、複数年の調査を求めている。これは方法書の段階から指摘している問題であるが、結局無視されてきたのであり、今回の指摘も空疎に聞こえる。私は前述の報告で、ソナーによる監視、航空機による追跡調査自体がジュゴンの行動を乱している可能性を指摘し、しばらく静かにしてやってもとの状態に戻るのを待ってから調査するのが先といったが、この考えは変わっていない。さらに、3頭といわれる個体(この数にも疑問が出ている)の将来をどうするのか、専門家の力量が問われているのに、その線での発言がない。最近のアセスでは生態系の定量評価が問われているのに、ジュゴンに対する該当手法はないのが現実である。「まもなく寿命を迎えるのなら、事業実施によってそれを少し早めるのは仕方ないのか」との私の問いにも、専門家の答えはない。なお、中心街に「クジラ料理屋」(実はイルカ)が今でもある名護なのである。

 これから さらに、民主党政権の発足によって、基地問題が激変するかも知れない。
民主党は、「名護への移動選定経過を含めて検討する」といっている。私が先に指摘した「戦略アセスに戻る」ことを含め、公共事業凍結の枠に含めることを考える時ではないか。なお、名護より北のヤンバルの森地域は海兵隊の訓練場になっているが、これ自身が環境破壊であり、さらに最近ではこの地区のヘリパッドの建設のアセス段階に入っていて、問題は普天間の移転だけではない。入隊と同時にアメリカ本土から送られてきた新兵がサバイバル訓練に耐えかね、麓の民家に食料をねだりに来るといった話を聞く。訓練場の縮小・返還に伴って、今度は林道の建設が行われている。そのヤンバルの森は、世界遺産登録を目指しているというのだから、言葉もない。
 審査会の答申を受けて、間もなく知事意見が出るが、政治状況の変化に応じてより突っ込んだ内容が含まれるかを見守りたい。私の沖縄詣ではこれからも続く。

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