アセス情報
    『環境アセスメントとは何か―対応から戦略へ』(原科幸彦、岩波新書)を読んで
                   島津康男(アセス助っ人)

 表記の新刊が出た。表紙腰巻の「透明な意志決定を」「持続可能な社会の作法として」がこの著書の全てを表している。未曾有の東北関東大震災が起こって、我が国の社会構造そのものが非常時にあたり、本書の流通が遅れたことは、逆に本書の意義を改めて示していると考える。40年にわたり、環境アセスメントを生涯の生命としてきた私自身も、3月26日の「環境行政改革フォーラム」の大会で「40年目を前に日本のアセスを考えよう」を発表する予定であったが、震災で大会が中止になるという状況なので、その内容と対比しながら、あえて書評を試みたい。
 著者によると、環境アセスメントの目標は、(開発)計画を実施するにあたり、「社会に対する説明責任」「意志決定過程の透明化」「科学性と民主性」の配慮を行うことである。これについては評者に異論はない。本書はいわゆる制度論の立場にたち、評者の現場論的立場と異なっているが、それにも関わらず本書に記載されている数少ない事例が「藤前干潟」「愛知万博」であることは興味が深い。何故ならば、前記の「40年目を前に・・・・」で挙げたベスト2がこの二つだからである。ここで、ベストの条件は「環境保全の観点から事業の変更・廃止につながったもの」「有効な市民参加が行なわれたもの」「予測・評価の技法に創意があり、事後事例への波及に有効なもの」である。
その裏返しがワーストであり、「方法書の公表前から現地調査を始めたり、方法書の中で予測結果を記載したり、審査会や住民の質問に答えず、それでいて勝手な時に情報を後出しするなど、ルールに反するもの」「予測の前提が不確定・評価基準が恣意的・編集の手抜きやリーダブルでない」が該当する。そして、ワースト1は「普天間基地移設」,ワースト2は「新石垣空港」となっている。日本の環境アセスメントは余りにマニュアル依存で、地域環境・地域社会の多様性に入り込む真剣さに欠ける。この欠陥は、より早期の計画段階への適用を目指す戦略的環境アセスメントの適用だけでは除けない。
 ともあれ、本書を日本再建の出発点の指針として推賞したい。評者は4年前に「アセス助っ人」という環境アセスメントの設計を支援する自己学習コンピュータ・システムを世に問うた。そして前記の「40年目を前に・・・・」では、さらに五感と情報を融合した生身の「アセス助っ人」養成システムのカリキュラムを提示している。それは、環境アセスメント情報戦の対応のノウハウ、等身大の環境調査法による自主環境アセスメントのノウハウを身につけるものである。実は、今改めて東京電力「青森県東通原子力発電所1,2号機に係る環境影響評価書」(平成15年)を見ている。これは最も新しい原発の環境アセスメント事例であるが、「堤防の設置は必要最小限にしたので、沿岸の流況に大きな変化はない」とある。そして、肝心の放射能は、法制定時の事業者の反対によって環境アセスメントの対象外なのである。


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