アセス情報20120112 (速報)
      
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書への見解
                    島津康男

1 評価書が出た 
 本事業のアセス手続きは、平成16年4月の方法書公告後、予定地を海上から沿岸部に変更しての第二回方法書を平成19年8月に公告したが知事が一時受け取り留保、平成21年4月に準備書を公告と、変則的な過程を経てきたが、今回の沖縄防衛局から沖縄県への評価書送付(準備書と異なり公告の必要なし)は、それにも勝る変則的なプロセスだった。
 すなわち平成23年12月27日に沖縄防衛局が県庁に搬入しようとしたが住民の反対にあって持ち帰り、翌28日の午前4時に守衛室において行くという異常な出来事になった。しかも、本事業はアセス法の対象としての埋め立て事業と県アセス条例の対象としての飛行場建設との二重構造になっており、前者に4部、後者に20部と合計24部の送付が必要なのであるが、抗議行動のため必要部数の全部を持ち込めず、年を越えて10日後の1月7日に不足分8部を送付してやっと手続きを終えるという前代未聞のできごとになった。しかも、
準備書が5400ページという日本のアセス史で一番厚かったのに、評価書はなんと7000ページもあるというすさまじさである。なお、縦覧に供して意見を聞く準備書の時と異なり、評価書については送付するだけでよく、縦覧の手続きはない。
 基地問題の象徴としての事例である上、上記の二重構造がアセスの問題をさらに複雑にしている。すなわち、別々の手続きといいながら、この二つが一つの文書に詰め込まれているため、準備書に対する知事・住民の意見に対する回答が埋め立てと飛行場建設との二重構造になっており、同じ回答内容が双方の章で繰り返される。そのため、ページ数が増えるだけでなく、
「環境影響評価法等に基づき適切に行っていきます」「可能な限り米軍に要請します」「米軍の運用の細部に関することであり、具体的に示すことは困難です」といった逃げ口上の回答がもともと多いのに、これが二度ずつ出てきて虚無感が目立ってしまう。
2 ワースト1のアセス 
 2011年9月の日本環境アセスメント学会で、私は「アセス40年目の危機をどう乗り越える」という発表を行い、40年の歴史の中で本事業をワースト1にあげた。その理由をここに再録すると次の通りである。
 「立地位置の迷走ごとに方法書を作り変える後追いアセスの典型で、本来なら立地代替案に対して相対評価をすることから始めるSEAが必要。方法書公表以前から海洋調査を始めたのは違法。また、ヘリコプターによるジュゴンの追跡調査は荒っぽく、ジュゴンの餌場として最適なはずの事業予定地に近づかないのは、追跡調査そのものが原因と思われる。それでいて、工事中にジュゴンの行動を乱さないよう配慮というだけで影響評価にもなっていない。確認されたのは定住のオス一頭、回遊してくるメス1頭と子供1頭であるが、専門家の意見によれば繁殖の可能性はほとんどなく、寿命がくるのを待つというのが本音ではないか。その一方、方法書に航空機の騒音結果を記載したり、審査会の質問には答えないでおいて、身勝手な情報の後出しをし、さらに5400ページもの前代未聞の厚い準備書で、バインダー版でなく普通の装丁なので開きにくくて読者への心配りに欠け、通しページもなくて編集の手抜きをうかがわせ、さらに住民の要求で1週間後に電子版を出すといった不手際もある。」
 また、那覇地裁で、このアセス手続きの無効を訴える住民訴訟が進行中であることを付け加えたい。
3 本評価書のチェックポイントと判定結果
上記のワースト1から抜け出すため、本事例の評価書に期待することとして、私は次の6点をあげた(「アセス情報 2011 12.23」)( )は今回行ったチェックの結果
(1) 
なぜ移設が必要なのか、なぜ移転先が辺野古なのかが具体的に書いてあるか (日米合意の内容が書いてあるだけ 沖縄県知事からの質問に対する回答の形で2011 12.12に防衛大臣が出した「在日米軍・海兵隊の意義役及び役割について」が布石になっていることがわかる)。
(2) 
準備書段階以後の米軍のグアム新移転計画の内容がどう反映されているか (司令部の移転となると、要員・家族が移転し、訓練基地とは異なる給水・排水形態になるはず((裏切られた。さらに、はじめから問題になっていた埋め立て土砂の調達方法についても今後の問題としている。必要土砂量は、現在沖縄での土砂供給量の11年分になるのである)
(3) 
オスプレイの導入の影響が記載されているか 特に、準備書段階での予測との違いを明示しているか (4で述べる)
(4) 
ジュゴンについて本気の保全対策を示しているか 準備書では現在予定地近くにいる個体について船・航空機による音・光などの擾乱要因を記載しているだけで、生態系としての保全への対応をしていない (5で述べる)
(5) 
準備書段階での知事・住民意見への回答がちゃんと行われているか(前述のように裏切られた)
(6) 
ドキュメンテーション技法に進歩があるか たとえば、改正アセス法の精神にのっとり、即日に電子媒体で公表するか、読者への配慮の一つとして通しページになっているか (いずれも裏切られた) 
最後の電子版については、改正アセス法によってすべてのアセス図書の電子媒体化がうたわれている。今回も住民の要求で電子化をするといっており、ホームページへの掲載は今月末といわれている。なお、準備書の時と同様、「沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団」が、自主的に電子版を作成中であるが、1月10日現在、まだ終わっていない。
 ここでは、騒音とジュゴンとの本案件での象徴的環境項目についてやや詳しく述べたい。
4 航空機騒音 
 主要施設が飛行場であり、現普天間飛行場での最大の問題が騒音であることから、この項目は重大な関心をもたれる。特に、
使用機が垂直離着陸輸送機(MV22 オスプレイ)となることから、その安全性、騒音が大きな関心になっている。準備書での想定離着陸ルートは急角度で回る台形だったが、今回はより現実に近い楕円形を想定している。しかし、これまでの大型輸送ヘリに比べて離陸時の騒音が最大20デシベル大きくなるため、予定地対岸の安部集落での騒音は準備書の段階より17.4デシベル高く、基準値を上回る可能性がある。これは、1機の運行による場合であるが、訓練計画や他基地との連絡運行計画が不明のため、定期便による普通の民間空港での総合的「うるささ指数」は不明である。
5 ジュゴン 
 評価書の6.16に記載され234ページある。準備書では229ページだったのでさほどページ数に変化はないが、準備書以後の23年1月までの継続調査の結果を含めている。そして、事業予定地周辺に定住する1個体、時々回遊してくる2個体の存在は変わらないとして、これら個体への影響を予測するのにとどまり、生態系の保全の観点はない。
 特に、平成15年まで事業予定地で観察された個体がいなくなったのはその個体の生息史の問題として、米軍の演習が特に多くなってはいないことをはじめ、航空機による追跡調査、海底に設置したソナーによる調査の影響など、人為的な擾乱が行動に影響したとは考えられないことを強調している。従って、予測は工事中・供用後とも、水のにごり、騒音・振動、照明を影響要因とするにとどまり、船舶の航行に注意すればいいとの楽観的な結論は、施設ありきを前提にしたもので、準備書段階と変わらない。逆に、沖縄県の環境管理計画に従うから大丈夫と開き直っており、
貴重な生物の生息環境を守ろうとする自然保護の観点は全くない

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