アセス情報20120210
      
  普天間飛行場移設アセスの評価書に審査会がノーを答申
                    島津康男
 これまでのアセス情報で述べてきたように、いろいろの問題を抱えながら進んできた表記のアセスだが、2月8日に沖縄県の審査会は「環境保全が不可能な事業」との答申をした。日本のアセスの歴史で、審査会がこのような激しい決論を出すのは珍しい。
 まず、事業形態の象徴である「航空機騒音」について、「今より出力の大きいオスプレイを導入しても、離着陸ルートを台形からレーストラック型に変更することで、陸上での騒音は環境基準を超えない」としているものの、「現在の普天間での運行計画を使っている上、今でもぶれのある離着陸ルートの不確実性を考えると、予測結果は信用できない」と指摘している。
 また、この地域での象徴的存在であるジュゴンについて、「事業予定地に近づかないのは、米軍演習や海洋調査による擾乱のせいではない」としているのに対し、「証拠となる具体的データを示してない」と指摘している。第一、環境省の技術指針における「生態系の定量的評価」を行うことを方法書の段階から指摘しているのに実施していない。私見でもすべてを個体の習性にするのは強引と思う。
 計画が不確定、調査が不十分、予測が甘いなどの技術的意見がアセスの審査で出るのは普通のことで、その上で、「これこれの配慮をされたい」と答申するのが、普通の審査会のやり方である。そして、「アワセメント」になるのである。もともと、審査会に意思決定の権限はない。
 でも、今回は、以上の技術的な欠陥に加えて、準備書の段階で事業者が質問に答えず、それでいて勝手な時に情報を後出し・小出しして来たこと、準備書への答申で出した150の疑問にほとんど答えていないこと、住民の反対行動を避けるため早朝4時に評価書を守衛室に置いていくなどの強引さから、どう見ても不合格ということだろう。事業の不適正と事業者(及びコンサルタント)の荒っぽさの両方を問題にしているわけである。
 ただ、このような厳しい結論には、沖縄の特殊な事情があるのではないか。審査会の委員は大学教員を主として沖縄に住んでいる方であり、しかも沖縄本島は狭く、人口は地方の中核都市より少し大きい程度の130万なので、審査委員も関係地域の住民なのである。東京や京阪神の審査委員なら、自分の家の近くでアセス対象の計画に出会う確率は小さいだろうが、沖縄ではそうは行かない。現に、所属する大学に米軍機が落ちた方もある。中立な専門家としての立場と関係地域住民との立場を兼ねているわけである。もちろん沖縄生まれで沖縄育ちの方ばかりではなくても、その心境は大都市の者とは異なる。
 現に、大都市圏で、隣の県の審査委員にはなるが、自分の住む県では近所に気兼ねしてか委員にならない大学の先生がいるのを知っている。また、あちこち掛け持ちする御用学者が多いことも知っているだけに、真面目に審査するほど板ばさみに陥ることも理解できる。審査委員の勇気にエールを送りたい。
知事そして事業者はこの結論に耳を傾けてほしい。これからでもまともなアセスにする方法が絶無ではない。私見ではあるが、辺野古の既設キャンプ施設を一部撤去してでも、より簡素で安全な飛行場を作る可能性は残っている。基本問題は世界一危険な普天間飛行場なのである。最近の情勢はさらに流動的で、8年の年月と80億円以上の経費をかけた挙句、ムダアセスになる可能性もある。



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