JICAのアセス研修

 JICAでは毎年発展途上国の若手専門家に対する約1月の環境影響評価の研修を行っており、今年も中東、アフリカ、南米、ネパ−ル、インドネシア、タイ、中国などから20ないし30代の13人が参加している。東京から名古屋、大阪と移動して現地見学を加えながらの研修であるが、名古屋では藤前干潟がテ−マになった。なお、大阪ではフェニックス計画を学んでいる。研修生は京都に行きたがるが、研修対象がないと訪問できないので、京都市の景観条例の説明を受けるという名目をつけたそうである。
 名古屋での藤前の研修では、6月16日午後に私がアセスを受け持ち、翌17日は事業者である環境事業局が焼却場と干潟の見学を受け持っている。実は、廃棄物処分場にしようとした藤前干潟の堤防に接して新しい焼却場があり、この処分場に運び込む予定だった廃棄物の半分が焼却灰であることも、搬入経費のことを考えて干潟を処分場にしようとした大きな理由なのである。
 ところで、藤前干潟のアセスの研修では、厚さ4cmの評価書を回覧した上で、大潮時の昼間に1時間ごとの鳥の行動を示した連続図のカラ−コピ−(「環境技術」6月号の評釈にその一部が載っている)を配付して、この図の意味を議論させ、鳥がリビングル−ムとダイニング−ムを使いわけており、事業予定地が干潮の短時間にダイニングル−ムになっていることが、この計画の命を決めたことを確かめさせた。その上、準備書の段階では4季ごとの平均値を示しただけで、審査会が原デ−タの提出を求めてやっとこの図が出てきたことから、アセスは情報戦(INFORMATION WAR)であることを考えさせた。
次に、情報戦としてのアセスを、処分場を作るというドラマにたとえ、配役を とした配役表を配付し、その間の対立、調整、合意の関係を考えさせた。技術内容と合意形成の経過とを併せた以上のやり方は、日本での研修にも役立つのではないか。
 最後に、「天の声(VOICE FROM HEAVENS)」(環境庁の見解)で決着したことを強調したが、その意味がわからない研修生が多かった。というのは、発展途上国ではすべての開発はお上が決め、実施するので、「天の声」は当たり前、又は前提だというのである。又、鳥の問題がなぜアセスの決め手なのかがわからないとの声があった。彼らの頭には「環境問題=公害」の図式があるからである。シベリアとオ−ストラリアを往復するシギにとって、藤前が数少ないTRANSIT AIRPORT なのだといっても、ピンとこないらしい。さらに、私の国では「環境問題=貧困」だという研修生があったのが大変印象的だった。


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