「環境技術」2011年10月号 記事情報

掲載年 2011
巻(Vol.) 40
号(No.) 10
598 - 598
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「アナモックス開発最前線」特集のねらい
著 者 宍田健一
第1著者ヨミ SHISHIDA
第1著者所属 (株)タクマ
要 旨
特集タイトル アナモックス開発最前線
特集のねらい  排水処理において窒素の除去方法として採用されるのは,硝化脱窒を基本原理とする生物処理の場合が多い.硝化脱窒は,アンモニアなどの窒素化合物を生物の作用により酸化して硝酸とし,これを BOD成分を用いて還元して窒素ガス化するものである.しかし,硝化脱窒を実施する場合,BOD濃度と窒素濃度のバランスによっては,脱窒に必要な BODを外部から添加することが必要になる.外部から添加するBODとしてはメタノールが使用されることが多いが,これが薬品費として窒素除去におけるランニングコストの増加を招く原因となる.
 これに対し,近年嫌気性アンモニア酸化(anearobic ammonium oxidation:アナモックス)の開発が進んでいる.アナモックス法は1990年代に新規に発見された窒素変換反応で,近年開発が進められて実用化段階となっており,海外を中心に導入が進められるとともに,国内でも導入検討が進んでいる.アナモックス法は,亜硝酸とアンモニアを基質として窒素ガス化する方法であり, BODの添加を必要としない.さらに,硝酸までの酸化が不要で曝気動力を低減できる(省エネルギー),滞留時間が短く設置面積を小さくできる,増殖速度が遅いため余剰汚泥量が少なくなるなど,様々な特長を有する.
 アナモックス法はBOD/N比の低い廃水に特に適した方法であり,このような廃水としては様々なものが考えられる.その中でも,とくに下水処理場におけるメタン発酵(汚泥消化)の脱水ろ液に対する開発が精力的に進められている.メタン発酵脱水ろ液は有機分が少なく窒素濃度の高い水質であり,これを下水処理に返流して処理する場合,窒素負荷を増大させる.このメタン発酵脱水ろ液にアナモックス法を適用することで,従来の下水処理に負荷をかけることなく,省エネルギーでコンパクトな処理システムの構築が期待できる.日本下水道事業団では民間企業と共同研究を実施,また「アナモックス反応を利用した窒素除去技術」を評価し,その成果をとりまとめている. 本特集では,このようなアナモックス法の実用化に向けた動きのなか,アナモックス法について紹介するとともに,下水を対象としたアナモックス法の開発状況について特集した.
 はじめにアナモックス研究の第一人者である熊本大学古川憲治教授に,「アナモックス技術の展望」と題して執筆いただいた.アナモックス法の開発の歴史やアナモックス菌の特性,開発されたリアクタについて説明いただくとともに,アナモックス法の適用先や適性の高い水質などから今後の展望を述べていただいた.
 次に,日本下水道事業団橋本敏一氏に,アナモックス法に対する日本下水道事業団の取り組みについて解説いただいた.アナモックス反応およびアナモックスプロセスの特徴について説明いただくとともに,下水処理への適用性や処理機能上の特徴,設計・運転管理上の留意事項など,設備導入時のイメージがまとめられている.
 さらに各種アナモックス法の技術的な特徴や実廃水を用いた実証結果について,(株)日立プラントテクノロジー井坂和一氏,メタウォーター(株)武田茂樹氏,(株)タクマ高木啓太氏らに執筆いただいた.アナモックス法は生物の固定化法によって様々なプロセスがあり,それぞれ特徴が異なる部分がある.井坂氏には「包括固定化担体を用いたアナモックス法」を,武田氏には「グラニュール汚泥を利用したアナモックス法」を,高木氏らには「付着固定化担体を用いた2槽式アナモックス法」をそれぞれ説明いただいた.
 今回の特集が,読者の皆様のアナモックス法に対する理解の一助になれば幸いである.

 なお,御多忙中執筆いただいた方々には,あらためて感謝いたします.