「環境技術」2005年2月号 記事情報

掲載年 2005
巻(Vol.) 34
号(No.) 2
81 - 81
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「PCB廃棄物処理の現状と課題」特集
著 者 福永 勲
第1著者ヨミ ふくなが
第1著者所属 大阪人間科学大学
要 旨
特集タイトル PCB廃棄物処理の現状と課題
特集のねらい  PCBはいまさら説明するまでもないが,Poly Chlorinated Biphenylの略であり,ベンゼン環が2個連結したビフェニールに塩素が最高10個ついている(ポリ塩化)化合物で,その化学構造式は図の通りである.その塩素数の多様な数と態様で209個の異性体があり,そのうち12種類の異性体は特に毒性が強く,ダイオキシン類に分類されている.
 PCBは1920年代にアメリカで発明され,水に難溶であり,油溶性で,熱及び化学的に極めて安定で,絶縁性,接着性,進展性に優れていて,かつ蒸気圧が小さくて比熱が大きいという特性をもっている.その特性を利用して,アメリカでは 1929年頃から,わが国では1950年頃から工業的に生産され,熱媒体,コンデンサーやトランスの絶縁体,感圧紙,塗料溶剤などに用いられてきた.しかし,次に述べるような毒性が検出され,あるいは PCBが食用油に混入し,発症するという中毒事件が発生するにいたって,その製造が1972年禁止された.それまでわが国では約59000トンが,製造されたと言われている.その後 PCBは一部焼却処理されたが,その焼却処理方法に付近住民の同意が得られないなど成功せず,そのまま保管という,放置が継続されてきたのが実情である.
 その毒性とは,ヒトにとっては急性毒性の LD50は250mg/kgとそれほど強くないが,皮膚障害,脳・神経・内分泌障害,呼吸器障害,脂質代謝異常などである.PCBは,すでに述べたように分解され難く,油溶性であるために,肝臓に蓄積しやすく,あるいは動物に蓄積しやすく,慢性毒性が顕著であり,あるいは環境ホルモン物質としても疑われている.環境中では,世界中の PCBが小島の海鳥絶滅事件などを引き起こした例もあり,その後世界中で対策が長期間遅れたために,地球上の大気環境,海洋が汚染されてしまったと言われている.
 このような事態の中で,世界的には残留性有機汚染物質(POPs)に対して,残留性,生物濃縮性,毒性,長距離移動性をもつ化学物質を指定する国際POPs条約が締結され(2001年)わが国も調印・批准した.その中に PCBも入り,,その結果わが国も PCBを本格的に処理する義務を負うことになった.そのため「PCB廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定され,広域処理を目的として,「環境事業団」法が改正されて,その任をまかされた.その後,その事業団から PCB廃棄物処理事業のみを行う機関として,特殊会社「日本環境安全事業株式会社」が設立され,全国を5事業所に分けて公共関与で PCB廃棄物が処理されることになった.昨年(2004年12月),その第1歩として北九州 PCB廃棄物処理施設が実稼働を開始した.
 そこで本誌では,上記の事業が環境に影響を与えることなく,付近住民に不安感をあたえることなく,成功裏にわが国から PCBがなくなることを願って,この機会にあらためて PCB問題の現状と課題を整理することとした.その内容はいずれもその道の専門家である先生方にお願いしたもので,(1) PCBによる環境汚染の現状と環境監視等の課題(中地重晴(環境監視研究所)(2)ポリ塩素化ビフェニル(PCBs)とその処理副生,物の健康影響(中室克彦(摂南大学薬学部)(3) PCB廃棄物処理技術の概要(渡辺信久(京都大,学環境保全センター)(4)わが国における PCB廃棄物と広域処理体制(立,川裕隆,他(日本環境安全事業梶jとなっており,特集表題にふさわしい内容となっていると自負している.
 最後になりましたが,お忙しい中快くご執筆頂いた先生方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます.