「環境技術」2005年4月号 記事情報

掲載年 2005
巻(Vol.) 34
号(No.) 4
241 - 241
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「事業化の進むバイオレメディエーション」特集
著 者 池 道彦
第1著者ヨミ いけ
第1著者所属 大阪大学
要 旨
特集タイトル 事業化の進むバイオレメディエーション
特集のねらい  平成15年2月15日の土壌汚染対策法の施行を契機として,我が国でも有害物質によって汚染された土壌・地下水の浄化事業が現実的なマーケットにのせられてから,すでに2年以上が経過した.これまでに,汚染浄化を目的としてさまざまな技術が開発されてきているが,生物の機能を利用して汚染を浄化し,土壌・地下水を元の状態にまで修復する技術をバイオレメディエーション(Bioremediation)と呼ぶ.
 バイオレメディエーションは土壌の固化や洗浄,地下水の揚水曝気や吸着・酸化処理などの物理化学的修復技術と比較して,一般的には安価で省エネルギーの技術であり,安全性が高く,土壌・地下水の損壊を最小限に食い止められるなどのメリットがある有望な選択肢として,その技術開発は長年注目を集めてきた.一方で,毒性の高い物質には適用できない,浄化速度が遅いなど,適応範囲に制限があるうえ,科学的に複雑なプロセスであるために制御が容易ではなく,試行においてしばしば効果が上がらないこともあったことから,実用技術とみなされるようになるまでにはかなりの時間を要した.しかし,バイオレメディエーションという言葉が耳に新しかった時代が過ぎ去った昨今では,多くの特徴ある技術が基礎研究という域から脱し,確かに実用技術となっている.また,近い将来の実用化を見据えて,ラボや実地での研究が行われている新技術も少なからずあり,まだまだ魅力的な技術開発のフィールドでもある.
 バイオレメディエーション技術は,汚染物質を移動させず土中などでそのまま浄化するか,そうでないかによって,それぞれin situ法(原位置修復)とex situ法(原位置外修復)に大別され,後者はさらに掘り出した土壌などを汚染現場内に設置したリアクターなどで浄化するon site法と,外部の処理工場等へ搬出して処理するff site法に区分される.また,浄化触媒として汚染現場の土着性微生物を活性化して利用する場合をバイオスティミュレーション(Biostimulation),ラボなどで分離(ときには育種)した外来の微生物を導入する場合をバイオオーグメンテーション(Bioaugmentation)と呼び区別する.最近ではバイオスティミュレーションから派生したより経済的な浄化法として,土着性微生物の活性化も行わず,いわゆる自浄作用に浄化を任せるナチュラルアテニュエーション(Natural Attenuation)といわれる新しい概念が提案,実施されるようになってきており,積極的に浄化促進を図る能動的修復(Active Remediation)に対比して受動的修復(Passive Remediation)と呼ばれる.また,浄化触媒として植物を利用する手法はファイトレメディエーション(Phyto-remediation)として新たな技術分野となっている.このように,バイオレメディエーションは,浄化の位置,生物触媒の種類,工学的手法導入の有無など,多様な視点において極めてバラエティーに富むオプションを有するオーダーメードの技術であり,その理解のためには個々の研究開発や事業の事例がそれぞれに重要である.
 本特集は,研究のレベルにとどまらず,一線で環境修復事業に参画している企業の技術者に,各種のバイオレメディエーション技術を紹介いただくとともに,その将来展望についても述べていただくことを狙いとして企画したものである.実用的バイオレメディエーション技術の現状を理解していただくための,また今後のさらなる展開の方向性を探っていただくための材料となればと考えている.
 末筆となったが,ご多忙のなか御執筆を頂いた著者の先生方に御礼申し上げる.