「環境技術」2005年8月号 記事情報

掲載年 2005
巻(Vol.) 34
号(No.) 8
545 - 545
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「京都議定書発効と温暖化防止対策の行方」特集
著 者 坂東 博
第1著者ヨミ ばんどう
第1著者所属 大阪府立大学大学院
要 旨
特集タイトル 京都議定書発効と温暖化防止対策の行方
特集のねらい  ロシアが批准したことを受けて,本年2月よりいよいよ京都議定書が発効することになり,2008年から2012年までの第1約束期間中に達成することが義務付けられている削減目標に向けて先進各国が実効のある具体的な行動をとり,義務を果たさなければならないことになった.
 温暖化問題の中心的課題はやはりCO2の削減である.その実現を図ろうとする際に直面する困難は,CO2排出の原因が社会・経済活動の基盤であるエネルギー資源に関わる問題であるために,単にエネルギー資源の利用効率の改善やエネルギー資源の多面化と新規開発によるっCO2排出削減といった技術的な側面での課題克服の問題にとどまらない.経済発展や物質的豊かさの享受といった個(国民=有権者)の欲望の充足と対策(政策)との折り合いのレベルから,国家同士間の排出量取引や発展途上国によるクリーン開発メカニズム(CDM)をてこにした先進技術導入や経済発展志向,さらには国としてのエネルギー安全保障の確保など,国家としての戦略のレベルまで,極めて多方面の問題を見通し調整した政策や国家戦略を必要とする.温暖化問題はこれまでの地球規模環境問題,酸性雨やフロンによるオゾン層破壊問題,に比べると,問題の影響が及ぶ範囲ならびに原因物質の利用削減・代替化に伴う社会・経済的負担の及ぶ範囲は格段に広く,個レベルであれ国家レベルであれ利害の調整から合意形成に至るまでには多大の努力が必要であろうことは容易に想像がつく.
 そこで,実効ある温暖化対策の枠組みとはどのようなものであるべきとみなされているか,また具体的には各国,とりわけ経済成長の著しいアジア地域を巻き込んだ(CDM等の利用を含め)議定書批准国の取り組みの状況はどのようなものか,それらは全世界的な調整なしのバラバラの取り組みで可能なのか,といった対策上の課題について概観し,また現在考えられている温暖化対策およびその背景にある温暖化影響予測の現状を概観してもらおうとの趣旨で,本特集では3人の専門家の方々にご執筆をいただいた.
 今回,温暖化特集のねらいについて書くにあたり,3つの原稿を拝読させていただき気付いた点をここに記させていただく.温暖化の影響評価および温暖化対策をご専門に研究されている3人の原稿に共通する点として,これらの研究分野では議論の中心がすでに第1約束期間(2008〜2012年)以降に移っているらしいことが窺われる.長期展望に立ち腰を据えた研究と議論が必要な分野である.
 上にも述べたように,今回の特集の企画段階では本年初頭の京都議定書の発効を受けて,第1約束期間の達成目標実現のための対策およびその背景にある温暖化影響評価の現状に対する興味がほとんどであったことを正直に告白しておく.考えてみれば,そのような議論は京都会議においても十分に検討・議論され尽くしていたはずである.そうでなければ,自国の利益擁護のために利害がぶつかり合い熾烈を極めた交渉を行なうはずの国際政治の場で,批准各国が議定書を批准することなどあり得ないであろう.自身の不明と不勉強を恥じるばかりである.
 しかし一方で,我が国はそれだけの検討・議論をし,戦略を持った上で京都議定書を批准してくれたのであろうか?
 本特集の3人の執筆者による原稿を読んだ今となっては,我が国が批准の裁定を下した際の判断の根拠を聞いてみたいものである.