「環境技術」2005年8月号 記事情報

掲載年 2005
巻(Vol.) 34
号(No.) 8
564 - 564
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「水道水源としての地下水の再評価」特集
著 者 菅原正孝
第1著者ヨミ すがはら
第1著者所属 大阪産業大学
要 旨
特集タイトル 水道水源としての地下水の再評価
特集のねらい  かつて,わが国の高度経済成長期には,産業用水の需要拡大を見込んで,また,人口急増を前提とした都市用水の大きな需要の伸びに合わせて,水資源の開発や水道施設の拡張が進められてきた.しかし,その後バブルの崩壊からこの10年間,産業用の水需要は大きく落ち込み,新たなダム開発計画も中止され,あるいは規模を縮小するなどの水政策の変更が迫られ,さらに製造業の海外移転や都市部から地方への転出など,水消費型産業の衰退といった産業構造の転換が進み,都市人口も減少し続けている.さらにまた,今年京都議定書の発効の時を迎えて,省資源・省エネルギー化が一層進められ,節水型都市づくりが奨励されるなかで,給水量の減少は一層顕著になっていくことと考えられる.
 このような給水量の減少によって水道会計の減収が続く一方で,さらに近年はスーパーマーケット・病院・学校などの大口の水需要者が,上下水道料金の高価格から逃れるための自己防衛策として,地下水を原水とした専用水道を付設する例が相次でいる.現在,わが国の水道事業において水源別給水量に占める地下水・伏流水の割合は,29%である.地下水はダムや河川の水と比較すると,汚染が少なく,良好な水質といえる.また,たとえその地下水が有機溶剤による汚染,あるいは地質起源によるヒ素汚染,高濃度の鉄・マンガンを含有しているとしても,浄水処理することは一定程度可能である.
 今日,21世紀は世界的に水資源の枯渇の時代に入ったといわれ,すでに一部では国と国との水争いが始まっている.世界銀行も世界の水資源問題に積極的に取り組み始めているが,ここでも水資源としての地下水の重要性が注目されている.日本でもこれまでのダムを中心とした水資源開発の見直しが始まり,近年は,表流水による涵養,水循環のなかでの有効利用という観点から,地下水が再評価され始めている.
 こうした地下水利用に際して,地下水利用技術は必要不可欠な技術である.地域の地下水収支のバランスなど地下水管理,過剰揚水にともなう地盤沈下の防止や,逆に適度な地下水利用をしなくなったことに起因する地盤の軟弱化への対策など,地域の水環境の保全をはかる際にも地下水利用技術は重要な技術である.しかし,その技術は,日本ではまだまだ一部の関係者の関心を集めているに過ぎないのではないかと思われる.海外では,日本では想像できないような水不足に悩まされているところが多くあり,地下水利用技術の活用,普及が急がれている.
 今回の特集では,地下水の再評価を行ない,その有効利用技術の開発と普及を目的としたNPO地下水利用技術センターによる「地下水利用技術セミナー」の成果を取り上げた.同セミナーでは「地下水利用の基礎である地下水探査や調査の方法をはじめ,どのようにして良質の地下水を探すのか,水循環のある帯水層を見つけ,持続的な取水を可能にするにはどのようにすればよいのか,等々,水道事業における地下水調査事例が紹介されたが,本特集では,そのなかからとくに水質との関連が強いテーマを取り上げ,新たに執筆をお願いした.地下水を利用されている水道事業者のみならず,地下水関連の仕事をされている方々,あるいは地下水に関心のある方々などに広く参考にしていただければ幸いである.