「環境技術」2006年12月号 記事情報

掲載年 2006
巻(Vol.) 35
号(No.) 12
882 - 882
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「畜産・廃棄物処理と悪臭対策」特集
著 者 福山丈二
第1著者ヨミ ふくやま
第1著者所属 大阪市立環境科学研究所水環境課
要 旨
特集タイトル 畜産・廃棄物処理と悪臭対策
特集のねらい  「循環型社会の構築」に向けて,従来は埋立地に運ばれ処分されていた多くの廃棄物が,資源回収やエネルギー回収のためにリサイクルされる事例が増えてきている.このリサイクル処理の工程でしばしば悪臭が発生し,その対策に苦慮していることが多い.この特集で取り上げた畜産業はその代表的なものである.家畜廃棄物は年間約2,000万トン排出され,全産業廃棄物排出量の約22.5%を占めている.
 平成11年11月1日から,「家畜排泄物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(家畜排泄物法)」が施行され,5年間の猶予期間が設けられたために平成16年11月1日から本格施行されている.この法律は,畜産経営による苦情防止,排泄物の河川や地下水への流出や浸透による水質汚濁の防止,排泄物の堆肥化等による利用の促進等を目的に制定された.法対象となる飼養規模は,牛10頭以上,豚100頭以上,鶏2,000羽以上,馬10頭以上と定められている.規制基準は,設備構造に関する基準と家畜排泄物の管理方法の基準からなり,ふんの処理・保管施設は,床をコンクリートや防水シート等の不浸透性材料で築造し,適当な覆い及び側壁を有することとし,汚水が飛散したり流出したりしないように基準を設けている.施設の種類としては,堆肥化施設(堆肥舎,発酵処理施設,乾燥施設),液肥化処理施設,浄化処理施設等がある.これらの施設で破損など起こった時には速やかに修繕することや送風機などの維持管理を適切に行うことが義務づけられ,それらが守られない時には,都道府県知事が事業者に必要な指導・助言,勧告・命令を実施するように定められている.この法律の制定が,畜産業での家畜排泄物の適正管理と再資源化の推進に大きく寄与し,家畜糞尿の再生利用率は約88%にまで増加し,悪臭対策指導も前進している.
 畜産業の悪臭については,悪臭防止法が制定された昭和46年当時から悪臭調査や脱臭方法の検討が進められてきた.しかし,畜産業の経営規模が一般に零細であり,脱臭施設のために多額の資金を投じられないという状況や発生源が密閉化されていないため脱臭装置の設置が難しいなどの理由で,し尿・下水処理場やパルプ工場のような効果的な改善策が採られず,現在も多くの問題を残している.畜産業の悪臭は,ほとんどが糞尿に起因するものであるため,糞尿処理を適切に行えば,悪臭発生をかなり抑制できるといえる.したがって,畜舎の臭気を低減させるには,日々の糞尿の清掃・排除を頻繁に行い,適正に糞尿を処理することが重要である.
 この特集では,最初に環境省の大気生活環境室の波多野実室長補佐に悪臭苦情の現況や最近精力的に取り組んでいる国の悪臭行政施策について紹介していただいた.次に,畜産関係の悪臭調査や脱臭対策の研究に長く関わっている岐阜県の高原康光氏と神奈川県の高橋通正氏の両氏に畜産関係施設,特にコンポスト化施設における脱臭対策について詳しく解説していただいた.家畜排泄物からの悪臭物質の原単位発生量の検討結果については,(独)農研機構北海道農業研究センターの長田隆氏に執筆をお願いした.畜産現場での悪臭等の環境負荷物質発生実態把握を定量評価することは,局地汚染としての悪臭問題と広域大気汚染の両面から重要な研究といえる.最後に松下電器産業鰍フ守屋好文氏に家庭生ごみ乾燥機から出る悪臭の脱臭技術について紹介していただいた.これらの技術は,畜産関係の堆肥化施設の脱臭に適用されているもので,食品廃棄物を含めた多くのコンポスト化施設でも応用できる.循環型社会を目指して行われるリサイクル事業での悪臭問題解決にこの特集が役立てられれば幸いである.