「環境技術」2008年3月号 記事情報

掲載年 2008
巻(Vol.) 37
号(No.) 3
153 - 153
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「ベトナムの環境と日本の技術協力」特集
著 者 菅原正孝
第1著者ヨミ すがはら
第1著者所属 大阪産業大学 
要 旨
特集タイトル ベトナムの環境と日本の技術協力
特集のねらい  ベトナムは,面積約33万km2,人口約8400万人である.人口構成の特徴は,若年層が多いということ,農村人口が都市人口に比べて圧倒的に多いということである.
 政治政策であるドイモイ路線が定着してすでに20年を越える社会主義国で,アジアでは中国についで経済発展が著しく,この数年のGDP成長率は7〜8%を誇る.主要産業は農林水産業など第一次産業であるものの,工業化の度合いは著しく,インフラ整備の進展と相俟って,海外からの企業進出には目を見張るものがある.
 しかし,日本が数十年前に歩んだ道と同様に,経済発展に伴う公害や環境破壊は美しいベトナムの田園風景を大きく塗り替えつつある.こうした現状を改善していくための国や自治体の対策としては,1993年から1995年にかけて環境保護法をはじめ環境基準や排出基準に関する法整備がされたほか,研究機関の充実を図るべく組織の見直し,人材の確保・育成にも見るべきものがある.しかし,環境保護や環境改善の実態は,統計資料を見る限り,あるいは筆者自身ここ数年にわたり毎年訪越しての見聞からも遅々とした状況が続いていると言わざるを得ない.
 もっとも,排出基準遵守に向けての自治体の取り組みは,天然資源環境室を中心に実施され,政令などにより環境保護違反に対する各種の罰則が規定され,優秀な企業に対しては名誉を与えるなど,排出負荷削減促進の仕組みが構築されている.
 環境分野に関しては,日越関係はことのほか良好であると思われるが,本特集においてはそうした国際的な交流や共同研究等の一部を紹介させていただき,日本とベトナムとのより一層の発展に繋がることに貢献できれば幸いである.
 内容としては,わが国の,政府,自治体,大学が環境分野において,それぞれどのようにベトナムとかかわりを持っているかについて,関西を基盤に活躍する関係者から報告されている.
 前田氏には,長年にわたる(独)国際協力機構(JICA)の環境部門の長期専門家としての派遣経験を踏まえ,ベトナムにおける環境問題全般を紹介する中でその特徴についてご報告いただく.
 Dong氏には,国立環境技術研究所の所長の立場からベトナムの水環境の現状ならびに政府の取り組みについてその経緯と課題を述べていただく.とくに,先進国からの財政的,技術的な支援は欠かせないことが指摘されている.
 池氏は,大阪大学とベトナムの大学との間で9年にわたり続く日本学術振興会プログラム拠点大学方式交流技術事業である「地球環境創造と保全のための環境総合技術の開拓」の中心となる研究者のおひとりであり,本事業の経緯と成果の一端についてご報告いただいた. 古川氏および近藤氏には,同事業に参画するなかで担当されたテーマについてご紹介いただいた.古川氏のご報告の内容は,アンモニアで汚染された地下水の生物学的浄化技術の日越共同開発である.近藤氏は,都市部への人口集中とモータリーゼーションが進むなかでの,大気モニタリングの共同研究の成果をご紹介いただいた.
 濱崎氏には,(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構が,児嶋氏には,大阪府が,それぞれベトナムとの間で進めている事業の一端を具体的事例や調査概要を踏まえてご紹介いただいた.
 以上,本特集が読者のベトナムの環境問題への関心をよりいっそう高めてくれることを願い,また両国のますますの発展を祈念して,筆をおく.