「環境技術」2008年3月号 記事情報

掲載年 2008
巻(Vol.) 37
号(No.) 3
196 - 196
記事種類 特別企画のねらい
記事タイトル 「上水道への紫外線処理導入の背景と現状」企画
著 者 神子直之
第1著者ヨミ かみこ
第1著者所属 立命館大学
要 旨
特集タイトル 上水道への紫外線処理導入の背景と現状
特集のねらい  紫外線が殺菌作用を持つということは古くより経験的に知られていたこともあり,水の消毒を目的とした紫外線処理は技術として新しい物ではない.実際に水処理の分野においても,従来より下水処理水の消毒,小規模な池の藻類の増殖抑制,清涼飲料水や薬品の原材料である水の消毒等,様々な分野で長いこと用いられている技術である.
 一方,上水道の分野では,長い使用実績と信頼性の高い塩素消毒がもっぱら用いられており,必要に応じてオゾン消毒が用いられることはあっても,紫外線処理の認可はなされていなかった.そのような状況でまず,1996年に埼玉県において発生したクリプトスポリジウム感染事故により,クリプトスポリジウム対策が求められるようになる.1996年に厚生省(当時)は,「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(以下,暫定対策指針)を定め,クリプトスポリジウム対策の要不要を大腸菌群および指標菌(大腸菌と嫌気性芽胞菌)の検出で判断し,対策の必要がある場合にはろ過(急速ろ過,緩速ろ過,あるいは膜ろ過)の設置および濁度管理(ろ過池出口で0.1度以下)を徹底するよう指示した.その後10年経過し,この対策整備の進捗が十分でなかったことと,暫定対策指針の策定以降に紫外線処理がクリプトスポリジウムに非常に有効であることが科学的に示されたことで,限定的ではあるが紫外線照射をクリプトスポリジウム等対策の処理として位置付けた「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(以下,対策指針)が2007年に策定された.
 ここで問題となったのが,紫外線照射装置の性能評価の方法である.水に対する紫外線処理の装置は確かに売られていたが,その性能評価あるいは性能表示の方法は統一されたものではなく,比較対照を行うことが難しい状況であった.それに加えて,対策指針にある紫外線照射量の規定「常時水量の95%以上に対して10mJ/cm2以上」が,ある装置で担保できているかどうかを示す,統一された方法がなかった.
 紫外線照射装置の性能評価法を確立するにあたっては,装置メーカーやエンジニアリング会社等民間の組織からの自主的な活動と,厚生労働省の関連組織の公的支援活動が手に手をとり合って作業を推進してきた.民間からは,紫外線照射装置の性能評価方法の標準化に関して,各メーカーが独自基準で行っていたものを相互に検討しようという気運が業界内部から生まれ,日本紫外線水処理技術協会(JUVA)が設立された.また,(財)水道技術研究センターが,従来より浄水場への浄水設備導入に関する支援事業を行っており,その一環として紫外線照射装置の認定が行われることになった.
 本企画は,水道の浄水プロセスへの紫外線処理の導入という新たな展開の局面において大きな役割を果たした二つの組織に原稿を依頼した.(財)水道技術研究センターの藤原理事長,近藤氏,中村氏には,紫外線処理導入の背景を,日本紫外線水処理技術協会の山越技術委員長,府中氏には,紫外線技術の現状をそれぞれ執筆していただいた.上水道への紫外線処理に対する社会的認知の第一歩としてどちらも重要な道標となる.紫外線処理のさらなる進化へとつながる現況のまとめとして,お読み頂ければ幸いである.