「環境技術」2009年3月号 記事情報

掲載年 2009
巻(Vol.) 38
号(No.) 3
153 - 153
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「農林畜産業からみたバイオマス利用の課題と展望」特集
著 者 土井和之
第1著者ヨミ どい
第1著者所属 内外エンジニアリング(株)
要 旨
特集タイトル 農林畜産業からみたバイオマス利用の課題と展望
特集のねらい  バイオマスにとって騒がしい2007年から2008年が過ぎた.石油の高騰からバイオ燃料がもてはやされたかと思うと,一転,食料価格高騰の原因とされた.そして,2009年初頭,石油価格は下落し,落ち着きを取り戻している.
 国におけるバイオマス利活用の推進施策はバイオマス・ニッポン総合戦略をもとに実行されている.最初の総合戦略は2002年に閣議決定され,京都議定書の発効を経て2006年に改定された.総合戦略では設備導入支援,研究開発促進,モデル事業創設,人材育成,海外への関与が謳われている.2008年10月には農林漁業バイオ燃料法が施行に至り,バイオ燃料製造事業者に対して固定資産税の減免などが措置されている.また,エタノール混合ガソリンのエタノールにかかる揮発油税,地方道路税の減免,バイオマス利活用施設の所得税,法人税等の優遇が決定された.
 バイオマス利活用事業がビジネスとして成り立つのかということがよく話題になる.公共部門を除けば,エネルギーをはじめバイオマスを原料として製造する製品は,化石資源から製造する製品との競合を強いられる.化石資源をふんだんに使い大量消費を認めるという価値観で成り立つ社会システムのなかで,バイオマスが化石資源に立ち向かうには,現状の事業導入補助を中心とした支援に加えてさらなる強化施策が必要と考える.
 こうしたなか,グリーンニューディールという言葉に期待が集まっている.価値観の転換といってもよいものである.バイオマス利活用は,このグリーンニューディールのなかの再生可能エネルギーの一環として,また温室効果ガス削減の一つの手段として,さらには雇用創出の場として認識されている.
 バイオマスはその多くが農山漁村に存在している.バイオマス・ニッポン総合戦略ではバイオマス利活用の効果として農林漁業・農山漁村の活性化を期待している.
 資源産出の場として農林漁業・農山漁村から家畜排泄物等の廃棄物系資源,稲わら・籾殻・間伐材などの未利用資源が多く発生し,さらにはバイオ燃料の原料である糖・デンプン・セルロース生産作物の栽培も検討されている.これらを利活用することは,地域の環境改善,雇用創出,森林の健康維持に大きく貢献する.また,利用されない農地の活用により耕作放棄が防止できる.余剰農作物の利用用途拡大の期待もある.
 バイオマスを変換した製品の利用の場としては,堆肥,発酵消化液,炭化物を農地に利用することで化学肥料や農薬の使用量が減少し,農地土壌の活力が増進する.バイオ燃料などバイオマスエネルギーによる農林業エネルギーの自給,カーボンニュートラルを根拠とする温室効果ガス削減というような効果もある.
 変換過程における革新的な技術やバイオマスの多段階利用,さらにバイオマスリファイナリー技術の開発は農山村の産業振興に寄与する.
 こうしたメリットに対し,食料・飼料との競合,堆肥の農地への過剰投入による地下水汚染,資源作物栽培や間伐材の収集・運搬において顕著に見られる経済性の問題,変換過程で発生する廃棄物処理,また,エネルギー収支でマイナスになるのではないかという疑問にも答えていかねばならないなどバイオマス利活用は課題も山積している.
 このようにバイオマス利用と農林畜産業そして農山村の環境や地域振興は関わりが深い.本特集では,農林畜産業分野及び生物学分野のバイオマス研究者に日本を中心に東南アジアを含めて農林業・農山村への影響,さらには里山保全を加味したバイオマス利活用の現状や課題,将来展望を各研究者の研究状況を踏まえ執筆いただいた.