「環境技術」2009年9月号 記事情報

掲載年 2009
巻(Vol.) 38
号(No.) 9
601 - 601
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「アスベストの管理と測定」特集
著 者 菅原正孝
第1著者ヨミ SUGAHARA
第1著者所属 大阪産業大学
要 旨
特集タイトル アスベストの管理と測定
特集のねらい  本学会には2005年から第三者評価委員会が設けられており,随時,会員から依頼された様々な技術について評価を行っている.その中で,アスベストの処理処分に関連する技術についても技術評価を行った経験がある.また,2005年6月に(株)クボタの工場およびその周辺で確認されたアスベストによる健康被害が公表されて以来アスベストに関しては学会の内外から様々な問い合わせが本学会に寄せられてきた.そこで学会内にアスベストに関する恒常的な情報交換の場が必要との認識から,研究会が2007年3月設置された.本特集は,いわばこうした経緯の中から生まれた.アスベストに関する特集は,2006年5月号に続き2度目である.その時は網羅的な取り扱いであった.
 1990年代終わりにわが国ではダイオキシン騒動があったことは未だに記憶に新しい.ダイオキシンは,全国至る所にあるゴミ焼却施設が発生源となって施設内はもちろんその周辺に飛散して土壌汚染や植物汚染を引き起こした.この猛毒のダイオキシンとアスベストは,見かけは全く異なるが,どこか似かよったところがある.思いつくままに羅列すると,次のようになる.モノの定義・表示法や分析方法についての近年の改正,分析には,高度な設備と技術がともに不可欠,そのモノの存在場所は,気相と固相が主,モノのリサイクルの可能性はなく,その処理は高温下での分解や溶融というエネルギー多消費型,健康リスクの点からは,作業現場が最も重要であるが,一般人をも巻き込んでの健康被害の懸念,既にこのモノが新たに世に出てこないような措置はとられているが,問題は現在身近に存在しているモノをいかにして安全に処分するのかが焦眉の急.もっとも両者が決定的に異なるところもあり,アスベストが天然鉱物であり,ダイオキシンは,意図的かどうかは別にして人工的に作り出されたモノである.
 本特集では,アスベストの管理については,関連省庁の委員会で技術面での指導的な役割を果しておられる酒井伸一教授に最新の溶融処理に関してご報告いただいた.また,アスベストの分析に係わる改訂 JIS法について改訂の各種委員会で中心的な立場におられた名古屋俊士教授に審議の経緯を含め詳細にその内容の解説をしていただいた.いずれも非常に専門性の高い内容であり,最先端の研究成果を垣間見ることができる.最後の報告は,前出のアスベスト研究会によるものであり,アスベストの適正管理において,分析が入口,処分が出口とすれば,アスベストを現場から処分地まで運搬輸送する過程は移動区間とでも言うことができようか.つまり,この間のアスベストの取りこぼしや飛散が多くなれば業務従事者のみならず一般国民の健康リスクは飛躍的に高くなってくる.その点の検証と改善の努力が求められている.アスベスト研究会では,このような現場の実態について目を逸らすことなく,直視することにより,より健康リスクを下げるべくこの移動区間における始点から終点までのシステムを論じてきた.赤裸々な現実を踏まえた上でシステムの細部にわたり検証しなければ折角の処分施設も宝の持ち腐れになるだけでなく結局は将来国民の健康障害が重大な社会問題になってくる可能性は避けられない.すぐには健康障害が現れないだけに怖い.
 今後の研究テーマや研究の流れについては,次のようなことが考えられる.
・建築物解体工事における吹付けアスベストの大気質への影響を少なくする工法の開発
・廃材中の吹付けアスベストの輸送・取り扱い時の飛散率の評価とその対策
・吹付けアスベストの埋立処分のリスク評価
・飛散性アスベスト処分の所要エネルギーとリスクおよび経済性を考慮した最適処分法
 将来に禍根を残さないために,本特集が多くの会員・読者の目に触れ,この分野に関心を持っていただければこれに勝る喜びはない.