「環境技術」2010年10月号 記事情報

掲載年 2010
巻(Vol.) 39
号(No.) 10
557 - 557
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー戦略」特集
著 者 本間琢也
第1著者ヨミ HOMMA
第1著者所属 筑波大学名誉教授
要 旨
特集タイトル 温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー戦略
特集のねらい  本特集の表題である「温室効果ガス25%削減に向けたエネルギー利用のあるべき姿」とは、前鳩山首相が、2009年9月22日に開催された国連気候変動サミットにおいて「我が国は全ての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築および意欲的な目標の合意を前提に、2020年までに1990年比で温室効果ガスを25%削減する」と表明したことに基づいている。この鳩山首相による意欲的な演説に対しては、国連総会の会場で大きな拍手が沸き起こったと伝えられている。
 他方、国内ではこの首相の声明を受けて、温暖化ガス削減の目標を実行するための道筋を示した法律「地球温暖化対策基本法案」が2010年5月12日に閣議決定され、これは第174回通常国会に提出された。しかし、2010年6月2日の鳩山首相の辞意表明により、同法案は通常国会の閉幕とともに廃案になり、更に7月11日の参議院選挙において民主党が敗北したため、この意欲的な方針は宙に浮いてしまった感がある。事実、この政策に関しては、その後の世論調査の結果や経済界を始めとする各界の反応において、「非現実的である」や「GDPを最大で5%引き下げる」という意見や試算が表明され、菅政権によってもどの程度この方針が踏襲されるのか、この行く末は不透明になっている。
 しかし他方、このような意欲的な目標こそが、新しいビジネスを立ち上げ、技術開発でそれを発展させることによって、雇用が促進され地域や国の経済を活性化させる原動力になるとして、この方針を支持する意見も寄せられている。この1つの代表例が三菱総合研究所の小宮山宏理事長の論説であり、彼は「家庭とオフィスに加えて輸送のエネルギー消費の8割減を目指すことが可能であり、そのためのグリーンインフラの整備と高齢化社会に対する備えによって新たな産業が創出される」と述べている。
 何れにせよ、近年の気温上昇や異常気象が頻発する現状をみると、これらの現象が温室効果ガスの排出に起因しており、やはりCO2を始めとする温暖化ガスの排出削減を積極的に進めていかなければならないとの認識は、世界の人々に広く受け入れられているというべきであろう。
 このような情勢を踏まえて、本特集では以下のようなストーリーよって考察が進められることになった。先ずCO2排出削減に有効な太陽光や風力発電、バイオマス、太陽熱利用などの再生可能エネルギーの導入を図るための技術と問題点について考察から始まり、ついでそれを大量に導入するために必要なエネルギーインフラ、すなわちスマートグリッドやスマートエネルギーシステムの在り方についての議論によって組み立てられている。スマートグリッドを構成するための要素技術は、二次電池と情報技術であるが、又二次電池は環境対応車と云われる電気自動車やプラグインハイブリッド車の主要な要素技術でもある。又電力のみならず熱を含めたスマートエネルギーシステムは、家庭における省エネルギーや低炭素化を実現するための有効な手段であり、そしてこれは燃料電池や燃料電池自動車を核とする水素エネルギー社会を実現させる技術体系に繋がるパスでもある。
 読者がこの特集のより、温暖化ガスの大幅削減に向けたエネルギー利用の将来像について、何らかのヒントを得ることができれば、著者にとってこれ程幸なことはない。