「環境技術」2010年11月号 記事情報

掲載年 2010
巻(Vol.) 39
号(No.) 11
641 - 641
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「下水道における新しい課題と取り組み」特集
著 者 李 玉友
第1著者ヨミ LI
第1著者所属 東北大学大学院
要 旨
特集タイトル 下水道における新しい課題と取り組み
特集のねらい  下水道法(2005年6月22日改正)によれば、下水道の目的は都市の健全な発達、公衆衛生の向上及び公共用水域の水質保全を図ることにあるとされている。平成21年度末の下水道整備状況として下水道整備人口は約9,360万人、処理人口普及率は73.7%に達し、全国で2,120箇所の下水処理場が稼働(2008年度末現在)するなど、膨大な施設が全国に展開されるようになった。現在、国民の約3/4は下水道が提供するサービスを享受している。一方、昨今の社会情勢の変化により、下水道の量的整備の他に、循環型社会への対応、地球温暖化防止のための低炭素社会への対応、新しい環境リスクや人口減少社会への対応、国際貢献など、様々な新しい課題がクローズアップされている。 まず、街(町)づくりにおける下水道整備状況とその役割を評価してみよう。下水道設置の基本的な目的は、トイレの水洗化や汚水の円滑な排除など生活の利便性の向上、管路の設置による地域の生活環境の改善、雨水排除による浸水の防除、そして排出先の公共用水域の水質保全となっている。街の環境衛生や都市河川の水質変化に関する歴史的変遷を見れば下水道の整備は生活環境の改善と水環境の保全に大きく貢献してきたことは明らかである。普及率が約3/4になった現在、量的整備に関して2つの問題が注目されている。一つは整備率の地域的不均衡である。平成21年度末の都道府県別の下水道整備状況に見てみると、普及率80%以上は8都道府県(東京都99.2%、神奈川県95.6%、大阪府92.5%、兵庫県91.1%、京都府90.6%、北海道89.1%、滋賀県85.4%)、60〜80%は19県、40〜60%は16県、40%未満は4県(鹿児島県38.9%、高知県31.7%、和歌山県19.5%、徳島県13.9%)となっており、大都市地域と地方の格差がかなり大きい。一方、未普及地域は人口が分散した地域が多く、整備効果の低い地域といわれ、農業集落排水事業や合併浄化槽などの代替施設と比較のうえ整備していく施策が採られてきた。最近では単純に建設経費から見て「下水道より浄化槽」という考え方が増えているが、「水質汚濁防止に貢献する」観点から下水道の効果が大きいのも事実である。今後下水道システムと浄化槽システムのあり方について社会基礎インフラの役割、水質保全の寄与度、財政的経営など様々な観点から具体的に検証する必要がある。 次に、「循環型社会の構築に貢献する」観点を考えてみる。下水道を都市・地域における収集・循環システムとして捕らえる場合、水、バイオマス、リン、廃熱などを広く集めているので、それらを効率よく回収して資源として循環利用できるのが下水道の付加的機能である。したがって、下水道を「循環の道」へ発展させていくべく、新しい技術を開発・導入するとともに、都市・地域計画の新しいアプローチも必要になる。 それから、「地球温暖化防止や低炭素社会の構築における下水道の役割」を論じてみる。下水道は水処理、汚泥処理の各過程において多くのエネルギーや薬品を消費し、温室効果ガス(主にCO2, CH4, N2O)を発生している。東京都では下水道事業で発生する温室効果ガスの量は都庁全体の43%を占めるほど注目の発生源となっている。今後下水処理場を省エネルギー的かつオンサイドのCH4, N2O発生量が少ないシステムに変えていかなければならないと思われる。 さらに、「公衆衛生の向上及び公共用水域の水質保全を図る」観点から、下水処理過程における新たな環境リスク(医薬品などの微量汚染物質、ウイルスなど)が注目され、「健全な水循環」の新たな課題として浮上している。 最後に、下水道を都市・地域の基礎的インフラとして持続させていくために、維持管理、経営の問題も避けて通れない。特に地方の人口減少地域では切実な課題となっている。 このような最新状況をより具体的に皆様にご紹介するために、表記のテーマで本特集を企画した。本特集の内容は皆様にとって参考になることを期待するとともに、ご多忙の中、執筆にご協力いただいた著者各位に心より厚く御礼申し上げます。