「環境技術」2011年12月号 記事情報

掲載年 2011
巻(Vol.) 40
号(No.) 12
713 - 713
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「生ごみ堆肥化の現状」特集のねらい
著 者 竺 文彦
第1著者ヨミ JIKU
第1著者所属 龍谷大学
要 旨
特集タイトル 生ごみ堆肥化の現状
特集のねらい  近年,ヨーロッパから近自然工法が取り入れられて,ようやく日本の河川の修復が進められている.経済性と防災の観点からコンクリートで固められた河岸や川底は生物が棲みにくく,また景観の面からも自然再生を目指す工法が採用されるようになってきたのである.では,お手本のヨーロッパでは,なぜ日本のようにコンクリート化が進まなかったのであろうか.多分,景観の問題と生物との共生の問題ではないだろうか.美しい街並みを築いてきたヨーロッパの人達にはコンクリートで固めた川は,川とはいえないのであろう.また,生物の権利を議論してきたヨーロッパの人びとは,魚の棲めない川にすべきではないと考えたのであろう.日本はヨーロッパを追いかけながら,追い越し過ぎてしまったと言える.
 生ごみの堆肥化についても,同じようなことが言えるのではないであろうか.かつて,都市において家庭ごみが増加してきてその処理に困った時,ヨーロッパではごみを焼却しているということを知り,ヨーロッパからごみ焼却の技術を学んで,ごみの焼却施設を造り始めた.その結果,現在,日本はごみの焼却大国となり,世界の焼却施設の半分以上が日本にあるといわれている.焼却施設においても,日本はヨーロッパを追い越してしまったのである.
 ところが,ヨーロッパにおいては,生ごみ処理に関しては,焼却によるダイオキシンや地球温暖化などの問題から,ホットなものはホットに,クールなものはクールに処理するとして,家庭ごみの生ごみを分別し堆肥化する方向への転換が進んだのである.最近は,メタン発酵も多くなっている.
 一方で,日本では,生ごみは燃えるごみとして焼却することが衛生的な処理方法であるとする前世紀の考え方から抜け出せず,生ごみは依然として可燃ごみとして焼却されている.また,ごみのリサイクルと言えば,細かに何種類にも分別し,再生利用することに重点が置かれているが,無駄なコストやエネルギーをかけていることが多いのではないだろうか.循環型社会の第一歩は,家庭ごみの3割から4割を占める生ごみの堆肥化である.水分の多い生ごみを分別して堆肥化やメタン発酵を行い,紙やプラスチックは焼却して電力や蒸気を取り出すということが,地球温暖化やエネルギーの観点から,大変重要である.
 本特集においては,家庭生ごみや食品廃棄物の堆肥化の事例を以下のように5つ紹介している.
 北海道長沼町堆肥生産センターでは,家庭生ごみの堆肥化を行い,農地に還元することで,健康な土づくりを行っている.
 千葉県香取市山田バイオマスプラントでは,小売店と野菜加工工場の野菜残渣の堆肥化を行い,循環型農業を行っている.
 三重県名張市近畿環境サービス鰍ナは,汚泥等の堆肥化を行っているが,家庭生ごみの堆肥化実験を行った.
 滋賀県大津市日映志賀鰍ナは,家庭生ごみを堆肥化し,できた堆肥を各家庭に循環している.
 大阪府門真市辰巳環境開発鰍ナは,食品リサイクル法に基づいて,小売業からの食品残渣の堆肥化を行っている.
 堆肥化のシステムを実施するためには,堆肥を利用する農地との連携が必要であると考えられるが,大津市の事例においては,生産された堆肥は各家庭に循環して消費され,堆肥は製品として出てこない.都市部においても適用が可能な堆肥化システムであると考えられ興味深い.本特集は循環社会における家庭ごみの処理システムに対する一つの提案である.