「環境技術」2013年8月号 記事情報

掲載年 2013
巻(Vol.) 42
号(No.) 8
451 - 451
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「膜分離活性汚泥法による下水処理の技術動向」特集のねらい
著 者 尾崎博明
第1著者ヨミ OZAKI
第1著者所属 大阪産業大学
要 旨
特集タイトル 膜分離活性汚泥法による下水処理の技術動向
特集のねらい  膜分離活性汚泥法は従来,し尿処理,浄化槽やビル排水処理(再利用)など,比較的高濃度の小規模排水の処理に用いられてきた.その後は,小規模・低濃度の下水処理への適用が模索されてきたが,最近では比較的大規模な下水処理場向けに最終沈殿池が省略できる処理法として,下水道事業団による実処理が行われるまでになった.
 周知のように膜分離法自体は,直接ろ過によりあるいは凝集処理などの前処理を行うことにより,海水淡水化をはじめ浄水,排水処理など多彩に応用されてきた.塩分や重金属,各種溶存有機物質,タンパク質,微粒子などの対象物にあわせた多様なすぐれた膜が開発されてきたことも大きい.しかしながら膜分離は,一般的にタイトな膜ほど透過水量が少なく,また膜ファウリング(膜面汚れ)はどうしても避けがたく短所も存在している.とくに下水のように,膜ファウリングを引き起こす微細粒子や高分子物質,塩類などの多様な成分を含有し,しかも比較的水量が多く汚濁物質の濃度が低い原水は,膜による直接ろ過の対象になりにくい.また微生物の力を借りる膜分離活性汚泥法の適用についても技術的にまたコスト的に課題が山積している状況にあった.
 このような状況下で,日本下水道事業団(JS)を中心に平成17年度から数百m3/日〜1万m3/日の比較的小規模な下水処理への適用が試みられてきた.また最近では,高速道路建設により最終沈殿池の用地が確保できなくなったことが端緒とは言え,わが国としては最大規模(60,000m3/日)での実用化が大阪府堺市で行われている.さらに,日本全国において今後も多くの施設が導入されることになっている.実処理が行われるにつれて,処理性が関わる運転実績や維持費用,膜ファウリングの実際などの貴重な知見が明らかになってきている.一方,本特集においても指摘されているように課題や未知の部分も多い.
 本特集では4件の報告を取りあげている.「膜分離活性汚泥法の技術評価について」(東京都市大学長岡裕著)では,平成25年4月に日本下水道事業団膜分離活性汚泥法専門委員会委員長として取りまとめられた『膜分離活性汚泥法の技術評価(第2次)』の概要として,中大規模への適用拡大と高機能化をめざした同法の技術評価について著述いただいた.また,膜分離活性汚泥法は,従来型の活性汚泥法とは異なる微生物群集を構成することから新たな基質資化性を有する可能性がある.「膜分離活性汚泥法の微生物学的特徴」(大阪大学大学院池道彦ら著)では,同グループによる研究成果も交え,微生物学的な側面から見た同法の機能解明への取り組みについて紹介いただいた.さらに,「膜分離活性汚泥法の下水処理への適用動向」(日本下水道事業団橋本敏一著)では,各種排水や下水道への膜分離活性汚泥法導入の歴史動向,下水道事業団や国での取り組みと導入状況,同法が有する課題と目標などについて多岐にわたってまとめていただいた.最後に「堺市三宝下水処理場─日本最大規模の膜分離活性汚泥法の導入と運転状況─」(堺市宮本博一著)では,大規模下水処理場(約60,000(m3/日)での実処理例として,導入経緯,運転状況と留意点,維持費用など,貴重な運転実績について報告していただいた.
 膜分離活性汚泥法は,排水処理ばかりではなく下水への適用も試みられるようになったが,未だ端緒が開かれたばかりである.本特集でいくつかの課題が明らかにされているが,まだ知られていない有用な特性もあると考えられる.同法の基礎的な特性がさらに明らかにされ,応用実績が積み重ねられて設計手法や効率的な運転管理手法が確立されていくことを期待したい.最後に,ご執筆いただいた方々に深く感謝申し上げたい.