「環境技術」2014年2月号 記事情報

掲載年 2014
巻(Vol.) 43
号(No.) 2
65 - 65
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 「リン資源の枯渇問題とリサイクル」特集のねらい
著 者 藤田眞一
第1著者ヨミ FUJITA
第1著者所属 藤田環境技術士事務所
要 旨
特集タイトル リン資源の枯渇問題とリサイクル
特集のねらい  18世紀後半からの産業革命に始まり20世紀は天然資源の大量消費の時代であった.そのツケとして,21世紀は天然資源の枯渇が目の前の現実となってきている.代表的なものであるエネルギー資源の石油は,経済産業省によると可採年数は40年程度とされている.資源の枯渇が迫ると,当然,資源の入手が困難となり価格も高騰し,さらなる入手困難な状況が加速される.日本は,天然資源のほとんどを輸入に頼っているためその影響は深刻である.
 石油より深刻なものとしてリン資源の枯渇がある.リンは肥料の三大要素の一つとして知られており,我々はリンを肥料として農業において,また,各種の触媒や化成品として工業的に利用するとともに,食品添加物等の原料としても幅広く利用している.また,人体を構成する重要な要素でもあり,生物としても,生産活動においても,人間はリンなしでは生きていけないと言える.
 世界的に見ても,リンの需要は年々増加しており,このまま需要量が増加すれば,今世紀の後半にも経済的に採掘可能なリン鉱石が枯渇するとも言われている.また,リン鉱石の採掘は,アメリカ,中国,モロッコ,ロシアで世界の約四分の三を占めるなど偏在しており,安定的な供給が危ぶまれている.日本は,他の多くの天然資源同様,リンの全量を海外からの輸入に頼っており,年々,リン鉱石の入手は困難になってきている.リン資源のリサイクル技術の開発は,限りあるリン資源を有効に利用するという観点でも,また,リンの環境中への拡散を防止して海域等における富栄養化を防止するという観点からも意義のあるものである.
 本特集においては,リンのリサイクルの技術と取組について,まず,リン資源の枯渇の現状とその影響,リンのリサイクルの必要性,リン資源の枯渇問題に対する世界の取組の現状を中心に,リン資源リサイクル推進協議会会長である大阪大学大学院の大竹久夫教授に解説いただいた.
 生物に取り込まれたリンは,体を構成する要素となるとともに,一部は体外に排出される.牛ふんや鶏ふんは,堆肥として利用されているため,ふん尿中に含有されるリンはそのまま肥料として活用されることになるが,これら以外の再利用が困難な鶏ふん焼却灰や畜舎汚水中のリンのリサイクル技術を含め,家畜ふん尿中のリンのリサイクルの現状について,(独)農研機構畜産草地研究所の鈴木一好上席研究員に紹介いただいた.
 また,本誌2013年7月号において特集された「鉄鋼スラグ」は,未利用のリンを相当量含んでおり,コスト面での課題の解決も含めて鉄鋼スラグからのリン資源の回収技術の開発は重要である.東北大学大学院の松八重一代准教授他には,鉄鋼スラグからのリン資源回収の可能性について解説いただいた.
 「都市リン鉱山」ともいえる下水汚泥等からのリン資源の回収については,まず,国土交通省の平成24年度下水道革新的技術実証事業(B-DASHプロジェクト)の一つとして神戸市において実施された下水道汚泥中のリン資源の回収とその利用事例について,神戸市建設局の坂部敬祐氏に紹介いただいた.さらに,下水道汚泥の焼却灰に含有するリンを産業廃棄物である廃酸を用いて回収するとともに,地域で一体となってリン資源を利用する取組,また,福島第一原子力発電所事故による下水道汚泥中のリン資源回収への影響等について,(地独)岩手県工業技術センターの菅原龍江氏に紹介いただいた.
 本特集が,リン資源のリサイクル技術理解の一助となれば幸いである.