「環境技術」2014年10月号 記事情報

掲載年 2014
巻(Vol.) 43
号(No.) 10
569 - 569
記事種類 特集のねらい
記事タイトル 特集のねらい「日本の林業と森林を考える」
著 者 網本博孝
第1著者ヨミ AMIMOTO
第1著者所属 誠心エンジニアリング
要 旨
特集タイトル 日本の林業と森林を考える
特集のねらい  農林業という言葉がある,農業と林業を一括した言葉である.両者は類似点も多いが,林業の主要産物である木材を考えれば,次の2点,@生産サイクルが30〜50年と長い点,A木材は建築用素材として鉄,プラスチック,繊維あるいはガラス・磁器などの代替物が多い点,燃料として石油,石炭の代替物がある点が大きな相違である.
 第二次大戦後から現在までの約70年の間に素材や燃料には激変といえるものがあり,農業分野では輸入品の増加,食生活や嗜好の変化程度であるが,林業(木材)に関しては代替物のことも大きな相違となる.林業の持つ特質として
@素材(主として建築素材)とその加工品としての特質
A薪炭も含めた燃料としての特質
B林地での他生物との相互作用(生態学的要素)
C林地での林道の開削や傾斜地の砂防保全(土木的要素)の必要性など.
これらは,一部農業との類似点はあるがその位置づけが農業に比較し非常に大きな特質といえる.
 本特集では林業の現在置かれた状況と将来について,併せて森林生態の持つ意義について考えるために研究者ばかりでなく,関係各分野に寄稿をお願いし,多方面から林業と森林生態のあり方を理解するための企画とした.
 はじめに,長年森林ジャーナリストとして,森林を自然レベルから地域社会まで包括的に捉える活動をされてきた田中淳夫氏に,現代に合わない長い生産サイクルを持つ林業に関して,戦後の高度成長期から現在までの状況と課題について総合的な解説をお願いした.誌面の制限で,著者に十分書き尽くしていただくことはできなかったが,少しではあるが,制度上の課題まで一部踏み込んで頂けた.
 2番目に,速水亨氏に,林業経営に携わる立場から林業とその合理化に向けた課題について執筆いただいた.補助事業から森林経営へ,そのための人材育成,作業工程の充実と合理化について海外との比較も交え報告いただいた.
 3番目に,少し視点は異なるが過去の林業政策等を批判的に振り返り森林生態への配慮を考えた林業に関して林業を支える立場の高田研一氏に報告いただいた.森林再生支援センターの専門家として森林の調査,設計,技術指導をする視点から,この50年の森林と社会環境の変遷を踏まえて新しい森林の価値を実現する森林経営のあり方,森林経済の思想が必要であるとされる.
 4番目には,森林生態学の立場から日本にわずかに残された原生林は実際どのようなものか?また,生態系サービスという言葉をキーワードに生態系管理を進めることが必要になることなど,知床の原生林に詳しく研究されている森章氏にカナダ等も含めた豊富な実例で紹介頂いた.
 5番目には,一般人に身近な里山の効用につき,京都という特殊な都市近郊林を例にとり,一般的な効用ばかりでなく文化財としての意義,景観を含めた里山の意義,管理ならびに今後の課題について深町加津枝氏に記して頂いた.
 最後に今後の林業を展望するに際して,人材育成につき教育学者の立場から浅田茂裕氏に執筆いただいた.内容は,若年層の林業等への関心から教育の枠組みとして@林業の基本的素養(林業のリテラシー)の構築,A一般的な職業教育とは異なる林業家(スペシャリスト)としてのキャリアを形成するための教育,B産業,生態学,土木,環境等さまざまな分野との連携した共通価値の創造について論じて頂いた.
 特集が幅広い内容になりすぎたきらいがあり,まとまりに欠ける内容となったかも知れない.浅田氏の論じる共通価値の創造という観点から日本林業と森林の現状の理解と将来を考える一助となれば幸いである.