「環境技術」2015年8月号 記事情報

掲載年 2015
巻(Vol.) 44
号(No.) 8
425 - 425
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(ドイツのメタン発酵技術開発の現状とその展開)
著 者 竺 文彦
第1著者ヨミ JIKU
第1著者所属 龍谷大学
要 旨
特集タイトル ドイツのメタン発酵技術開発の現状とその展開
特集のねらい 日本は,明治以降,西欧の社会システムや科学技術を学びながら,国を発展させてきた.科学技術の面では,西欧に追いつき追い越して,世界最高の技術を達成し,高度成長を遂げてきた.しかし,最近は中国や韓国などの技術的な発展に追われて,社会的にも経済的にも停滞感が強くなっているように思える.かつて日本が技術面で西欧を追い越そうとしていたとき,西欧の社会は,これらの状況にどのように対処してきたのであろうか.日本は,まだまだ西欧諸国から学ぶことが多いと思われる.
 温暖化防止対策として,再生可能エネルギーを利用し,化石燃料の消費を減らしていこうとする考え方や政策は誰もが認めるところであるが,有機物をメタン発酵してエネルギーとして利用する施設については,日本とドイツではかなり状況が異なっている.すなわち,ドイツではメタン発酵施設が多く建設され,畜産廃棄物や飼料などがエネルギーに変換されているが,日本では北海道を除くと,メタン発酵施設の数は多くない.これは,技術的な課題として,メタン発酵後の脱離液の処理の問題があると考えられる.すなわち,農業形態がメタン発酵の技術に関連してくるのであり,脱離液を液肥として散布できる地域と,水田のように液肥の使用が困難な地域では,メタン発酵の経済性が異なるのである.
 さらに,電力の買取システムの違いや,発生する温水の利用可能性などの社会的な状況の違いが,ドイツと日本のメタン発酵の普及に大きな影響を与えているものと考えられる.
 私自身,2012年に1ヵ月ほどドイツのアーヘン市に研究滞在し,環境施設の見学を行った(本誌2013年1,2,4,5月号「アーヘン訪問記」参照).日本との違いについては,まず,家庭ごみから生ごみが分別され,主に紙とプラスチックが焼却施設で焼却されて発電,さらに,地域に温水が供給されて,エネルギー利用されていた.ドイツでは,ホットなごみはホットに処理し,ウェットなごみはウェットに処理するという考え方をもとに,生ごみの堆肥化が1990年代に普及して,現在ではどこの町にも堆肥化施設があるといえる.さらに,アーヘン市では生ごみにより嫌気的堆肥化が行われていた.すなわち,密閉式の堆肥化施設で,発生するメタンガスにより発電を行っていた.日本ではメタン発酵の後に出てくる脱離液の処理が問題であるが,嫌気的堆肥化により脱離液の処理の問題が解決するかもしれない.家庭ごみを焼却して発電しようとする場合,生ごみは水分が多く発電効率を下げることになる.日本では,まず,家庭ごみから生ごみを分別することが必要であろう.
 最近流行のバイオエネルギー村の見学も行った.マールブルグ市に近いオーバーロスフィー村の見学会に参加したが,木材チップによる発電と畜産廃棄物,飼料によるメタン発酵を行っていた.多くの近隣の農民が見学に来ていた.ドイツの人たちは,真剣にエネルギーの問題に取り組んでいると感じたものである.
 本特集では,立命館大学のラウパッハ先生より,広い立場からドイツの再生可能エネルギー政策の状況,変化についてご報告いただき,ドイツ・再生可能エネルギー機関の梶村氏からバイオエネルギー村の現状やメタン発酵施設についてご報告いただいた.さらに,日本ユニテック鰍フ今泉氏から技術的な報告をいただき,バイオガス事業推進協議会の岡庭氏,小川氏より日本の状況についてご報告いただいた.
 再生可能エネルギーの利用について,ドイツはドイツで試行錯誤しながら歩みを進めており,日本もどのようなプロセスを経て政策を決定し進めていくかについて,ドイツから学びながら,日本の方針を定めていく必要がある.