「環境技術」2015年10月号 記事情報

掲載年 2015
巻(Vol.) 44
号(No.) 10
529 - 529
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい(現場で使える環境分析技術)
著 者 藤川陽子
第1著者ヨミ FUJIKAWA
第1著者所属 京都大学
要 旨
特集タイトル 現場で使える環境分析技術
特集のねらい 環境分析の目的は,環境汚染の診断,環境中の物質の動態や分布の分析,各種の法令基準への適合度の判定,そして例えば各種製造工程や排水・廃棄物の処理プロセス等の監視と最適化など,場面と用途により様々である.
 さて,近年,環境分析分野では,ますます機器分析の比重が高まっている.例えば,元素分析においては原子スペクトロメトリ法の装置が多くの研究機関に採用されている.また,従来はそれぞれ単一の装置で行っていた分析を組み合わせるいわゆるhyphenated method(たとえば高速液体クロマトグラフ─質量分析法による有機および無機物質の分析)もセット商品として販売されるようになった.このような機器分析の進展と高度化は,環境を保護する観点から望ましいものであるが,エンドユーザーの側から見れば,分析操作の内容がブラックボックス化したということでもある.大学・関係機関での教育や技術継承が重要である.
 環境分析では,試料保存の難しい測定項目(例:水中の溶存酸素濃度や酸化還元電位)や現場で測定するほうが容易な項目(例:pH)は,現場で測定するが,それ以外の項目は試料を実験室に持ち帰って測定を行う.実験室に試料を持ち帰る場合は,分析結果の出るまでにタイムラグが出る. 一方,緊急を要する環境監視や,時々刻々変化する処理プロセスを環境監視に基づいて最適化する,等の目的がある場合,分析結果の出るまでのタイムラグの発生は不都合である.そのため,現場で,ある程度高度な分析項目についてもデータが得られる分析技術や分析機器の需要が存在する.ただ,近年進歩の著しい機器分析技術は,分析用のガス供給等のための配管その他の分析環境整備が必要で必ずしも現場で使えないものが多い.
 本特集では,このような観点から,特に水環境監視や排水処理で問題となる水質項目と,福島第一原発事故以降注目の集まる放射線に関し,現場で使える環境分析技術を紹介する.
 本特集では第一に,歴史が古く,分析キットも多数開発されて現場で使える分析技術の代表格ともいえる比色法を砒素およびアンチモン分析に適用した例について解説していただいた.解説中では砒素等の捕集後の試験用紙に蛍光X線分析を適用した測定の紹介もある.地下水中の地質起源の砒素による住民の砒素中毒の事例は数多いが,それらの事例についても,各種,紹介されている. 特集の二報目では,歴史の古いボルタンメトリ法を環境水・排水中の有害金属分析に適用する場合の作用電極の選択や干渉現象,分析自動化の最新動向について,実例をもとに解説を行った.ボルタンメトリ法の一種であるポーラログラフィを専門課程で履修した読者も多いと推察する.ただし,近年は水銀を電極に使用するポーラログラフィの利用は忌避される傾向にあり,本特集で紹介する様々な固体電極を用いた分析が主流である. 特集の三報目では,めっき工場排水に特化し,最近問題となっているホウ素処理問題を紹介するとともに,現場の工夫で設置した分析装置で処理プロセスの監視と自動制御を行っている例を紹介した.めっき排水は環境負荷の高い様々な有害元素を含むため,その処理プロセスの研究の歴史は古いが,法規制の変遷とともに新しい規制対象物質が現れていることが注目される.
 特集の四報目では,放射線測定を取り上げた.いわゆる外部被ばく線量を算定するための基本である空間線量率測定は,そもそも現場で可搬型のサーベイメータや定置型のモニタリング機器で測定するものである.ただ,福島第一原発事故により,市民が放射線のサーベイメータを持つようになったり,農産物中の放射性物質測定に公民館に設置した核種別分析機器が活用される時代となった.このような中でこの記事では正しい最新の知識を読者にわかりやすく解説していただいた.