「環境技術」2017年3月号 記事情報

掲載年 2017
巻(Vol.) 46
号(No.) 3
123 - 123
記事種類 特集
記事タイトル 特集のねらい【環境・エネルギーから考えるこれからの建築】
著 者 本庄孝子
第1著者ヨミ HONJO
第1著者所属 元国立研究開発法人産業技術総合研究所
要 旨
特集タイトル 環境・エネルギーから考えるこれからの建築
特集のねらい 昨年のパリ協定で温暖化を2℃目標のみならず1.5℃への言及があった.196ヵ国が合意し,温暖化ガスをより削減する方策がそれぞれの国に託された.日本は2030年までに2013年比26%二酸化炭素削減を約束した.この数字は決して甘くなく,民生部門は約40%のCO2排出量の削減が割り当てられた.
省エネルギーはオイルショック以後,産業や交通では検討され続けてきた.が,住宅については太陽光発電等装置などに限られてきた.住宅関連全体に関する消費エネルギーは現在,以前に比べ2割ほどアップしており,住宅の省エネ化はすぐ対応しなければならないと位置付けられた.
また我が国は65歳以上25%を超える超高齢化社会になり,一方,単身世帯数もふえ,これらに勘案した新たな住宅が求められている.住宅関連の省エネ基準が2013年に変更され,住宅の一次エネルギー消費量を以前の基準より減らすことが新たに基準に加わった.新築の場合2015年度から完全施行となり,2020年には義務化になるといわれている.
国連では一昨年末に2030年に向けたアジェンダが採択され,その具体的課題としてSDGs(持続可能な開発目標)が発表され,17のゴールが示された.この包括的な目標の達成は日本社会の脱炭素化に貢献する時宜を得た取り組みと言える.一方では,日本では住宅の断熱向上が進んでいない.断熱がもたらす幅広い便益の周知が消費者に対して不十分のためである.SDGs が唱える経済,社会と,環境の統合化の下でその目標を目指すことは,多様なコベネフィットの顕在化を含め,都市,建築の居住環境の改善にそのままつながる.このことを広く社会に周知すべきだろう.我が国の住宅をトータルに検討する時代に入った.建物の断熱性を増し,再生可能エネルギー等を取り入れて,創エネすることが基本と言われている.
ここでは(一財)建築環境・省エネルギー機構の村上周三氏から,世界の潮流を踏まえて,我が国の施策を検討していただく.21世紀型開発は環境負荷の削減と,環境品質の向上の両方を目指していく.建物の断熱の有無と健康との関係が明らかになった現在,断熱に投資して,光熱費削減と健康維持効果を考慮した投資回数年数を明らかにした.また断熱は遮音性にも効果がある.
芝浦工業大学の秋元孝之氏からは,「エネマネハウスプロジェクト」について紹介していただき,CLT(Cross Laminated Timber:直交集成材)を用いた住宅の活用等で,@集合メリットを生かしたエネルギー環境,A都市の変化やダイバーシティに対応できる住環境,Bアジア地域に展開できる居住システムの3点を掲げ,世代を超えて住み継げる集合型のZEH を提案する.
立命館大学の近本智行氏からは,居住文化から考えた取り組み例を紹介していただく.単純に高気密高断熱・高効率設備,創エネ設備の導入ではなく,地域の気候や風土といった特性を考慮した上で自然の風や太陽の光の恵みを上手に利用して,豊かな住宅文化を継承し,地域コミュニティ促進にむけた方向での提案である.部分的断熱改修で,現行の省エネ基準を満たす.水のカスケード利用など,ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)に水循環を加えた提案は,アジアをはじめとする世界への展開を考える上で大きな訴求力をもつ.
大和ハウス工業鰍フ大槻卓也氏,藤本卓也氏からは,スマートシティの取り組みで,堺市晴美台の事例を紹介していただく.
大阪大学の下田吉之氏,松岡綾子氏からは,住まい方とエネルギー利用についての試算例で,家庭での住まい方で,すぐできる行動による節電効果について論じ,電力ピーク時の節電を主たる目的にしている.