「環境技術」2019年6号 記事情報

掲載年 2019
巻(Vol.) 48
号(No.) 6
318 - 321
記事種類 特集
記事タイトル 微生物のカルコゲン代謝を利用した環境適合型半導体ナノ粒子合成
著 者 黒田真史、池 道彦
第1著者ヨミ KURODA
第1著者所属 大阪大学大学院
要 旨 1.は じ め に
 現代の我々の生活は,スマートフォン,パーソナルコンピュータ,家電製品などの家庭用はもとより,交通システム,電力システム,地球観測衛星など,様々なスケールの電子機器に支えられて成り立っており,それらほとんど全てに半導体が用いられている.半導体のうち,構成元素の組合せにより様々な特性を示す化合物半導体は,太陽光発電などの再生可能エネルギー分野や,量子コンピュータや量子ドットディスプレイなどの先端技術に利用されており,特に注目を集めている.半導体はナノ構造化することにより性能が飛躍的に高まることが知られているが,一般的な化合物 半導体ナノ粒子の合成は有害な有機リン化合物を溶媒として用いるプロセスや,大きなエネルギー消費を伴う溶融・ナノ粉砕等の単位操作を含むプロセスなどによって行われており,合成時の環境負荷が高いという問題点がある.
 一方,バクテリアや酵母,糸状菌等の微生物を利用した生物学的な化合物半導体ナノ粒子合成法の研究が進展しつつある1).これは,微生物の持つ代謝作用により,カルコゲン元素(第1 6族元素,硫黄・セレン・テルル等)を還元し,対となる金属イオンと結合させることでカルコゲン化物半導体を合成するものであり,μmオーダーの大きさの微生物細胞を合成のプラットフォームとするため,生成したカルコゲン化物半導体は必然的にナノサイズになる.また,合成は微生物の生育に適した中温(20〜40℃)で行われ,生物に有害な薬 品の使用量も少ないため,環境負荷が小さいという利点も有する.従来の合成法の問題点を解決する可能性があるこれらの特徴から,微生物を用いた化合物半導体ナノ粒子の合成法は近年,注目を集めている.本稿では,筆者らが解明に取り組んできた細菌のカルコゲン代謝と,それを活用したカルコゲン化物半導体ナノ粒子の生物学的合成について紹介する.
キーワード:半導体ナノ粒子,生物学的合成,細菌のカルコゲン代謝,セレン,テルル
特集タイトル 環境・資源保全に資するメタルバイオテクノロジー
特集のねらい