「環境技術」2020年6号 記事情報

掲載年 2020
巻(Vol.) 49
号(No.) 6
311 - 315
記事種類 特集
記事タイトル 淀川ワンドの底泥と二枚貝におけるマイクロプラスチックの汚染実態
著 者 相子伸之、近藤美麻、近藤泰仁、田中周平
第1著者ヨミ AIKO
第1著者所属 地方独立行政法人 大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センター 
要 旨 1.はじめに
 大阪府を流れる淀川は,約100種の淡水魚の生息が確認されている,全国有数の淡水魚類相の豊かな河川である.淀川の沿岸には,「ワンド」と呼ばれる独特の入江構造がある.このワンドは,航路確保や堤防保護のために明治期以降に作られた水制工に由来する地形であり,これによりもたらされる複雑な構造は,多くの水生生物のすみかとなっている1,2).
 例えば,淀川では天然記念物のイタセンパラなどのタナゴ類は,ワンドをすみかとしてきた魚類である.全国的に河川や池・沼に生息するタナゴ類は,多くの種が国もしくは都道府県のレッドリストに記載されている3,4).タナゴ類はイシガイ目二枚貝を産卵場所とする生活環をもっており,ふ化後は二枚貝のエラの中で1〜数ヵ月(イタセンパラでは7ヵ月の長期間)をすごす.産卵母貝となるイシガイ目二枚貝もまた全国で生息数の減少が懸念されており5,6),ワンドはタナゴ類やイシガイ目二枚貝をはじめとした希少な生物の貴重な生息場となっている.その一方で,ワンドはその構造的な特徴からごみなどが漂流・滞留しやすい水域でもある
 淀川の水源となっている琵琶湖では,水中および底質でマイクロプラスチック(以下,MPs)が検出されており7―9),琵琶湖から流出したMPs は淀川に流下し,ワンドで滞留することが考えられる.絶滅危惧種のうち,生存への脅威としてMPsの影響があげられている種は現在のところないものの,近年の調査が明らかにしているように自然環境下でのMPs の分布の現状と生物の体内からの検出事例を考慮するとその影響は軽視できない8,10,11).
 二枚貝の餌は,水中のプランクトンや懸濁した底泥中のデトライタスなどである5).これらを含む水をとりこみエラでろ過して,必要なものを体内に取り込む.イシガイ目二枚貝の寿命は十〜数十年といわれており12,13),仮に水中や底泥にMPsが分布していれば,長期的にMPs をろ過し続けることになることになり,生体に影響を及ぼすことが懸念される.
 タナゴ類は産卵管を伸ばして,二枚貝の出水管からエラに卵を産み付け,器官が未成熟の状態で孵化しエラに寄生して成長したのちに貝から浮出する.そのため,MPs により二枚貝へ与えられるダメージは,タナゴ類の稚魚にも影響を与えると考えられる.
 そこで本研究では,淀川の本流およびワンド内のMPs の汚染実態を明らかにするため,底泥,あるいはそこに生息する二枚貝の体の中に含まれるMPs の調査を実施した.
キーワード:マイクロプラスチック,イシガイ目二枚貝,底泥,淀川,ワンド
特集タイトル 水域環境におけるプラスチック汚染の現状と研究の到達点
特集のねらい