掲載年 |
2020 |
巻(Vol.) |
49
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号(No.) |
6
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頁 |
316 - 320 |
記事種類 |
特集
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記事タイトル |
プラスチックの市場動向―その恩恵と負の遺産― |
著 者 |
高野拓樹 |
第1著者ヨミ |
TAKANO |
第1著者所属 |
京都光華女子大学 |
要 旨 |
1.はじめに 飲食店を利用した際,「あれ!? ストローが紙になっている.」と気になった人も少なくないだろう.世界中がプラスチックによる海洋汚染に注目する中で,多くの企業・団体がプラスチックの使用を見直し始めている.プラスチックの語源はギリシャ語の「Plastikos(プラティコス)」(自由に成形できるもの)であり,誕生以来,フィルムやパイプの他,さまざまな複雑な形状の製品に適用され,さらに安価に製造できることから一気に需要が拡大していった.プラスチックのように広く使用されてきながら,その使用が制限されてきたものの例としてオゾン層破壊につながるフロンガスがある.しかし,フロンガスに比べてプラスチックの利用分野は極めて広く,容器包装リサイクル法(1995年)注1)で回収されるプラスチックは飲料水用のペットボトルの割合が大きい他,その他の容器については回収されたとしても,耐熱性がある,耐油性がある等,用途に合わせて多種多様に高機能化されており,リサイクル時の重要なポイントとなる同質のプラスチックを回収するのは困難となっている1). 本報では,主にプラスチック市場に焦点をあて,その生産量やリサイクルの実情,その他,国内外における政府や企業のプラスチック削減のための取組について紹介するが,その前に,ここでは海洋プラスチックごみの回収に取組む数名の若者を紹介しておきたい.一人目はNGO「オーシャン・クリーンアップ」創始者のボイヤン・スラットである.彼は18歳でNGO を立ち上げ,25歳の時に「太平洋ごみベルト注2)」でプラスチックごみの回収に成功した.2050年までに海洋プラスチックごみをなくすという彼の挑戦に200人のスタッフと4000万ドル(約44億円)の寄付金が集まった2,3).一方,アイルランド出身の18歳の少年フィオン・フェレイラは,水中のマイクロプラスチック(後述)を効果的に抽出する技術の開発により,グーグル・サイエンスフェア2019で優勝した4).また,カナダの大学生チームが授業の課題でビーチの砂からマイクロプラスチックだけを吸い上げる掃除機を開発している5). 気候変動や砂漠化のように,海洋プラスチックもゆっくりと進んできた地球規模の問題である.このような慢性事象に対して危機感を抱くことは難しいが,若者が新しいアイデアを提案しつづけることはとても心強い. |
特集タイトル |
水域環境におけるプラスチック汚染の現状と研究の到達点 |
特集のねらい |
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